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滅後の五品
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妙法蓮華経分別功徳品第十七
爾時大会。聞仏説寿命劫数。長遠如是。無量無辺。阿僧祇衆生。得大饒益。
爾の時に大会、仏の寿命の劫数長遠なること是の如くなるを説きたもうを聞いて、無量無辺阿僧祇の衆生大饒益を得つ。
於時世尊。告弥勒菩薩摩訶薩。阿逸多。我説是如来。寿命長遠時。六百八十万億。那由他。恒河沙衆生。得無生法忍。復有千倍。菩薩摩訶薩。得聞持陀羅尼門。復有一世界。微塵数菩薩摩訶薩。得楽説無碍弁才。復有一世界。微塵数菩薩摩訶薩。得百千万億。無量旋陀羅尼。復有三千大千世界。微塵数菩薩摩訶薩。能転不退法輪。復有二千中国土。微塵数菩薩摩訶薩。能転清浄法輪。復有小千国土。微塵数菩薩摩訶薩。八生当得。阿耨多羅三藐三菩提。復有四四天下。微塵数菩薩摩訶薩。四生当得。阿耨多羅三藐三菩提。復有三四天下。微塵数菩薩摩訶薩。三生当得。阿耨多羅三藐三菩提。復有二四天下。微塵数菩薩摩訶薩。二生当得。阿耨多羅三藐三菩提。復有一四天下。微塵数菩薩摩訶薩。一生当得。阿耨多羅三藐三菩提。復有八世界。微塵数衆生。皆発阿耨多羅三藐三菩提心。
時に世尊、弥勒菩薩摩訶薩に告げたまわく、阿逸多、我是の如来の寿命長遠なるを説く時、六百八十万億那由他恒河沙の衆生無生法忍を得。復千倍の菩薩摩訶薩あって聞持陀羅尼門を得。復一世界微塵数の菩薩摩訶薩あって楽説無碍弁才を得。復一世界微塵数の菩薩摩訶薩あって百千万億無量の旋陀羅尼を得。復三千大千世界微塵数の菩薩摩訶薩あって能く不退の法輪を転ず。復二千中国土微塵数の菩薩摩訶薩あって能く清浄の法輪を転ず。復小千国土微塵数の菩薩摩訶薩あって、八生に当に阿耨多羅三藐三菩提を得べし。復四四天下微塵数の菩薩摩訶薩あって、四生に当に阿耨多羅三藐三菩提を得べし復三四天下微塵数の菩薩摩訶薩あって、三生に当に阿耨多羅三藐三菩提を得べし。。復二四天下微塵数の菩薩摩訶薩あって、二生に当に阿耨多羅三藐三菩提を得べし。復一四天下微塵数の菩薩摩訶薩あって、一生に当に阿耨多羅三藐三菩提を得べし。復八世界微塵数の衆生あって、皆阿耨多羅三藐三菩提の心を発しつ。
[解説]
阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。
仏説是諸菩薩摩訶薩。得大法利時。於虚空中。雨曼陀羅華。摩訶曼陀羅華。以散無量。百千万億宝樹下。師子座上諸仏。竝散七宝塔中。師子座上。釈迦牟尼仏。及久滅度。多宝如来。亦散一切。諸大菩薩。及四部衆。又雨細抹。栴檀沈水香等。於虚空中。天鼓自鳴。妙声深遠。又雨千種天衣。垂諸瓔珞。真珠瓔珞。
摩尼珠瓔珞。如意珠瓔珞。於九方。衆宝香炉。焼無価香。自然周至。供養大会。一一仏上。有諸菩薩。執持旛蓋。次第而上。至于梵天。是諸菩薩。以妙音声。歌無量頌。讃歎諸仏。
仏是の諸の菩薩摩訶薩の大法利を得ることを説きたもう時、虚空の中より曼陀羅華・摩訶曼陀羅華を雨らして、以て無量百千万億の宝樹下の師子座上の諸仏に散じ、竝に七宝塔中の師子座上の釈迦牟尼仏及び久滅度の多宝如来に散じ、亦一切の諸の大菩薩及び四部の衆に散ず。又細抹の栴檀・沈水香等を雨らし、虚空の中に於て天鼓自ら鳴って妙声深遠なり。又千種の天衣を雨らし、諸の瓔珞・真珠瓔珞・摩尼珠瓔珞・如意珠瓔珞を垂れて九方に遍ぜり。衆宝の香炉に無価の香を焼いて、自然に周く至って大会に供養す。一一の仏の上に諸の菩薩あって旛蓋を執持して次第に上って梵天に至る。是の諸の菩薩妙なる音声を以て、無量の頌を歌して諸仏を讃歎したてまつる。
爾時弥勒菩薩。従座而起。偏袒右肩。合掌仏向。而説偈言
爾の時に弥勒菩薩座より起って、偏に右の肩を袒にし、合掌し仏に向いたてまつりて、偈を説いて言さく、
仏説希有法 昔所未曾聞 世尊于大力 寿命不可量
無数諸仏子 聞世尊分別 説得法利者 歓喜充身
仏希有の法を説きたもう 昔より未だ曾て聞かざる所なり
世尊は大力ましまして 寿命量るべからず
無数の諸の仏子 世尊の分別して
法利を得る者を説きたもうを聞いて 歓喜身に充遍す
或住不退地 或得陀羅尼 或無価楽説 万億旋総持
或有大千界 微塵数菩薩 各各皆能転 不退之法輪
復有中千界 微塵数菩薩 各各皆能転 清浄之法輪
復有小千界 微塵数菩薩 余各八生在 当得成仏道
或有四三二 如此四天下 微塵数菩薩 随数生成仏
或一四天下 微塵数菩薩 余有一生在 当得一切智
如是等衆生 聞仏寿長遠 得無量無漏 清浄之果報
復有八世界 微塵数衆生 聞仏説寿命 皆発無上心
世尊説無量 不可思議法 多有所饒益 如虚空無辺
或は不退の地に住し 或は陀羅尼を得
或は無碍の楽説 万億の旋総持あり
或は大千界 微塵数の菩薩あって
各各に皆能く 不退の法輪を転ず
復中千界 微塵数の菩薩あって
各各に皆能く 清浄の法輪を転ず
復小千界 微塵数の菩薩あって
余各八生あって 当に仏道を成ずることを得べし
或は四三二 此の如き四天下
微塵数の菩薩あって 数の生に随って成仏せん
或は一四天下 微塵数の菩薩
余一生あることあって 当に一切智を得べし
是の如き等の衆生 仏寿の長遠なることを聞いて
無量無漏 清浄の果報を得
復八世界 微塵数の衆生あって
仏の寿命を説きたもうを聞いて 皆無上の心を発しつ
世尊無量 不可思議の法を説きたもうに
多く饒益する所あること 虚空の無辺なるが如し
雨天曼陀羅 摩訶曼陀羅 釈梵如恒沙 無数仏土来
雨栴檀沈水 繽粉而乱墜 如鳥飛空下 供散於諸仏
天鼓虚空中 自然出妙声 天衣千万億 旋転而来下
衆宝妙香炉 焼無価之香 自然悉周 供養諸世尊
其大菩薩衆 執七宝旛蓋 高妙万億種 次第至梵天
一一諸仏前 宝幢懸勝幡 亦以千万偈 歌詠諸如来
如是種種事 昔所未曾有 聞仏寿無量 一切皆歓喜
仏名聞十方 広饒益衆生 一切具善根 以助無上心
天の曼陀羅 摩訶曼陀羅を雨らして
釈梵恒沙の如く 無数の仏土より来れり
栴檀沈水を雨らして 繽粉として乱れ墜つること
鳥の飛んで空より下るが如くにして 諸仏に供散し
天鼓虚空の中にして 自然に妙声を出し
天衣千万億 旋転して来下し
衆宝の妙なる香炉に 無価の香を焼いて
自然に悉く周遍して 諸の世尊に供養す
其の大菩薩衆は 七宝の旛蓋
高妙にして万億種なるを執って 次第に梵天に至る
一一の諸仏の前に 宝幢に勝幡を懸けたり
亦千万の偈を以て 諸の如来を歌詠したてまつる
是の如き種々の事 昔より未だ曾てあらざる所なり
仏寿の無量なることを聞いて 一切皆歓喜す
仏の名十方に聞えて 広く衆生を饒益したもう
一切の善根を具して 以て無上の心を助く
◎一念信解 是第一信
○挙示其人 (其の人を挙示す)
爾時仏告。弥勒菩薩摩訶薩。阿逸多。其有衆生。聞仏寿命。長遠如是。乃至能生。一念信解。
爾の時に仏、弥勒菩薩摩訶薩に告げたまわく、
阿逸多、其れ衆生あって、仏の寿命の長遠是の如くなるを聞いて、乃至能く一念の信解を生ぜば、
○明其功徳無量 (其の功徳の無量を明す)
所得功徳。無有限量。若有善男子。善女人。為阿耨多羅三藐三菩提故。於八十万億。那由他劫。行五波羅蜜。檀波羅蜜。尸羅波羅蜜。提波羅蜜。毘梨耶波羅蜜。禅波羅蜜。除般若波羅蜜。以是功徳。比前功徳。百分千分。百千万億分。不及其一。乃至算数譬喩。所不能知。
所得の功徳限量あることなけん。若し善男子・善女人あって、阿耨多羅三藐三菩提の為の故に、八十万億那由他劫に於て五波羅蜜を行ぜん。檀波羅蜜・尸羅波羅蜜・・提波羅蜜・毘梨耶波羅蜜・禅波羅蜜なり、般若波羅蜜をば除く。是の功徳を以て前の功徳に比ぶるに、百分・千分・百千万億分にして其の一にも及ばず。乃至算数・譬喩も知ること能わざる所なり。
[解説]
阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。
○位行不退
若善男子。有如是功徳。於阿耨多羅三藐三菩提退。無有是処。
若し善男子、是の如き功徳あって、阿耨多羅三藐三菩提に於て退するといわば、是の処あることなけん。
[解説]
阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。
爾時世尊。欲重宣此義。而説偈言
爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言わく、
○格量多少 (多少を格量す)
若人求仏慧 於八十万億 那由他劫数 行五波羅蜜
於是諸劫中 布施供養仏 及縁覚弟子 竝諸菩薩衆
珍異之飲食 上服与臥具 栴檀立精舎 以園林荘厳
如是等布施 種種皆微妙 尽此諸劫数 以廻向仏道
若復持禁戒 清浄無欠漏 求於無上道 諸仏之所歎
若復行忍辱 住於調柔地 設衆悪来加 其心不傾動
諸有得法者 懐於増上慢 為斯所軽悩 如是亦能忍
若復勤精進 志念常堅固 於無量億劫 一心不懈怠
又於無数劫 住於空閑処 若坐若経行 除睡常摂心
以是因縁故 能生諸禅定 八十億万劫 安住心不乱
持此一心福 願求無上道 我得一切智 尽諸禅定際
是人於百千 万億劫数中 行此諸功徳 如上之諸説
若し人仏慧を求め 八十万億
那由他の劫数に於て 五波羅蜜を行ぜん
是の諸の劫の中に於て 仏
及び縁覚弟子 竝に諸の菩薩衆に布施し供養せん
珍異の飲食 上服と臥具と
栴檀をもって精舎を立て 園林を以て荘厳せる
是の如き等の布施 種々に皆微妙なる
此の諸の劫数を尽くして 以て仏道に廻向せん
若し復禁戒を持って 清浄にして欠漏なく
無上道の 諸仏の歎めたもう所なるを求めん
若し復忍辱を行じて 調柔の地に住し
設い衆の悪来り加うとも 其の心傾動せざらん
諸の有ゆる得法の者の 増上慢を懐ける
斯れに軽しめ悩まされん 是の如きをも亦能く忍ばん
若し復勤め精進し 志念常に堅固にして
無量億劫に於て 一心に懈怠せざらん
又無数劫に於て 空閑の処に住して
若しは坐し若しは経行し 睡を除いて常に心を摂めん
是の因縁を以ての故に 能く諸の禅定を生じ
八十億万劫に 安住して心乱れず
此の一心の福を持って 無上道を願求し
我一切智を得て 諸の禅定の際を尽くさんと
是の人百千 万億の劫数の中に於て
此の諸の功徳を行ずること 上の諸説の如くなん
○追頌人相 (人の相を追頌す)
有善男女等 聞我説寿命 乃至一念信 其福過於彼
若人悉無有 一切諸疑悔 深心須臾信 其福為如此
善男女等あって 我が寿命を説くを聞いて
乃至一念も信ぜば 其の福彼れに過ぎたらん
若し人悉く 一切の諸の疑悔あることなくして
深心に須臾も信ぜん 其の福此の如くなることを為
○位行不退
其有諸菩薩 無量劫行道 聞我説寿命 是則能信受
如是諸人等 頂受此経典 願我於未来 長寿度衆生
如今日世尊 諸釈中之王 道場獅子吼 説法無所畏
我等未来世 一切所尊敬 坐於道場時 寿説亦如是
若有深心者 清浄而質直 多聞能総持 随義解仏語
如是諸人等 於此無有疑
其れ諸の菩薩の 無量劫に道を行ずるあって
我が寿命を説くを聞いて 是れ則ち能く信受せん
是の如き諸人等 此の経典を頂受して
我未来に於て 長寿にして衆生を度せんこと
今日の世尊の 諸釈の中の王として
道場にして獅子吼し 法を説きたもうに畏るる所なきが如く
我等も未来世に 一切に尊敬せられて
道場に坐せん時 寿を説くこと亦是の如くならんと願せん
若し深心あらん者 清浄にして質直に
多聞にして能く総持し 義に随って仏語を解せん
是の如き諸人等 此に於て疑あることなけん
又阿逸多。若有聞仏。寿命長遠。解其言趣。
又阿逸多、若し仏の寿命長遠なるを聞いて、其の言趣を解するあらん。
○正格量 (正しく格量す)
是人所得功徳。無有限量。能起如来。無上之慧。
是の人の所得の功徳限量あることなくして、能く如来の無上の慧を起さん。
◎広為佗説 是第三信
○標人相 (人の相を標す)
何況広聞是経。若教人聞。若自持。若教人持。若自書。若教人書。若以華香瓔珞。幢幡繒蓋。香油蘇燈。供養経巻。
何に況んや、広く是の経を聞き若しは人をしても聞かしめ、若しは自らも持ち若しは人をしても持たしめ、若しは自らも書き若しは人をしても書かしめ、若しは華・香・瓔珞・幢幡・・蓋・香油・蘇燈を以て経巻を供養せんをおや。
○正格量 (正しく格量す)
是人功徳。無量無辺。能生一切種智。
是の人の功徳無量無辺にして、能く一切種智を生ぜん。
◎深信観成 是第四信
阿逸多。若善男子。善女人。聞我説寿命長遠。深心信解。則為見仏。常在耆闍崛山。共大菩薩。諸声聞衆。圍繞説法。又見此娑婆世界。其地瑠璃。坦然平正。閻浮檀金。以界八道。宝樹行列。諸臺楼観。皆悉宝成。其菩薩衆。咸処其中。若有能如是観者。当知是為。深心解相。
阿逸多、若し善男子・善女人、我が寿命長遠なるを説くを聞いて深心に信解せば、則ち為れ仏常に耆闍崛山に在って、大菩薩・諸の声聞衆の圍繞せると共に説法するを見、又此の娑婆世界其の地瑠璃にして坦然平正に、閻浮檀金以て八道を界い、宝樹行列し、諸臺楼観皆悉く宝をもって成じて、其の菩薩衆咸く其の中に処せるを見ん。若し能く是の如く観ずることあらん者は、当に知るべし、是れを深信解の相となづく。
[解説]
耆闍崛山(ぎしゃくせん) 霊鷲山(りょうじゅせん)のこと。王舎城(ラジギール)にある小高い山。サンスクリット原語を音写すると耆闍崛山となり、漢訳すれば鷲峰となる。山の形から鷲峰となったとも言われる。
◎列五品格量四品功徳 (五品を列ねて四品の功徳を格量す)
○直起随喜心 (直に随喜の心を起こす) 第一 ※底本本文は直記
又復如来滅後。若聞是経。而不毀。起随喜心。当知已為。深心解相。
又復如来の滅後に、若し是の経を聞いて毀・せずして随喜の心を起さん。当に知るべし、已に深信解の相となづく。
○加自受持読誦 (加えて自ら受持読誦す) 第二
何況読誦。受持之者。斯人則為。頂戴如来。阿逸多。是善男子。善女人。不須為我。復起塔寺。及作僧坊。以四事供養衆僧。所以者何。是善男子。善女人。受持読誦。是経典者。為已起塔。造立僧坊。供衆僧養。則為以仏舎利。起七宝塔。高広漸小。至于梵天。懸諸幡蓋。及衆宝鈴。華香瓔珞。抹香。塗香。焼香。衆鼓妓楽。簫笛箜篌。種種舞戯。以妙音声。歌唄讃頌。則為已於。無量千万億劫。作是供養已。
何に況んや、之を読誦し受持せん者をや。斯の人は則ち為れ如来を頂戴したてまつるなり。阿逸多、是の善男子・善女人は我が為に復塔寺を起て及び僧坊を作り、四事を以て衆僧を供養することを須いず。所以は何ん、是の善男子・善女人の是の経典を受持し読誦せん者は、為れ已に塔を起て僧坊を造立し衆僧を供養するなり。則ち為れ仏舎利を以て七宝の塔を起て、高広漸小にして梵天に至り、諸の幡蓋及び衆の宝鈴を懸け、華・香・瓔珞・抹香・塗香・焼香・衆鼓・妓楽・簫笛・箜篌・種々の舞戲あって、妙なる音声を以て歌唄讃頌するなり。則ち為れ已に無量千万億劫に於て是の供養を作し已るなり。
○加勧他受持読誦 (加えて他を勧め受持読誦せしむ) 第三
阿逸多。若我滅後。聞是経典。有能受持。若自書。若教人書。則為起立僧坊。以赤栴檀。作諸殿堂。三十有二。高八多羅樹。高広厳好。百千比丘。於其中止。園林浴池。経行禅窟。衣服飲食。牀褥湯薬。一切楽具。充満其中。如是僧坊。堂閣若干。百千万億。其数無量。以此現前。供養於我。及比丘僧。是故我説。如来滅後。若有受持読誦。為他人説。若自書。若教人書。供養経巻。不須復起塔寺。及造僧坊。供養衆僧。
阿逸多、若し我が滅後に、是の経典を聞いて能く受持し、若しは自ら書き若しは人をして書かしむることあらんは、則ち為れ僧坊を起立し赤栴檀を以て諸の殿堂を作ること三十有二、高さ八多羅樹、高広厳好にして、百千の比丘其の中に於て止み、園林・浴池・経行・禅窟・衣服・飲食・牀褥・湯薬・一切の楽具其の中に充満せん。是の如き僧坊・堂閣若干百千万億にして其の数無量なる、此れを以て現前に我及び比丘僧に供養するなり。是の故に我説く、如来の滅後に、若し受持し読誦し、他人の為に説き、若しは自らも書き若しは人をしても書かしめ、経巻を供養することあらんは、復塔寺を起て及び僧坊を造り衆僧を供養することを須いず。
○加兼行六度 (加えて兼ねて六度を行ず) 第四
況復有人。能持是経。兼行布施。持戒忍辱。精進。一心。智慧。其徳最勝。無量無辺。譬如虚空。東西南北。四維上下。無量無辺。是人功徳。亦復如是。無量無辺。疾至一切種智。
況んや復人あって能く是の経を持ち、兼ねて布施・持戒・忍辱・精進・一心・智慧を行ぜんをや。其の徳最勝にして無量無辺ならん。譬えば虚空の東・西・南・北・四維・上・下無量無辺なるが如く、是の人の功徳も亦復是の如し。無量無辺にして疾く一切種智に至らん。
○加正行六度 (加えて正しく六度を行ず) 第五
若人読誦。受持是経。為他人説。若自書。若教人書。復能起塔。及造僧坊。供養讃歎。声聞衆僧。亦以百千万億。讃歎之法。讃歎菩薩功徳。又為他人。種種因縁。随義解説。此法華経。復能清浄持戒。与柔和者。而共同止。忍辱無瞋。志念堅固。常貴坐禅。得諸深定。精進勇猛。摂諸善法。利根智慧。善答問難。阿逸多。若我滅後。諸善男子。善女人。受持読誦。是経典者。復有如是。諸善功徳。当知是人。已趣道場。近阿耨多羅三藐三菩提。坐道樹下。阿逸多。是善男子。善女人。若坐若立。若経行処。此中便応起塔。一切天人。皆応供養。如仏之塔。
若し人是の経を読誦し受持し、他人の為に説き、若しは自らも書き若しは人をしても書かしめ、復能く塔を起て及び僧坊を造り、声聞の衆僧を供養し讃歎し、亦百千万億の讃歎の法を以て菩薩の功徳を讃歎し、又他人の為に種々の因縁をもって義に随って此の法華経を解説し、復能く清浄に戒を持ち、柔和の者と共に同止し、忍辱にして瞋なく志念堅固にして、常に坐禅を貴び諸の深定を得、精進勇猛にして諸の善法を摂し、利根智慧にして善く問難を答えん。阿逸多、若し我が滅後に、諸の善男子・善女人、是の経典を受持し読誦せん者復是の如き諸の善功徳あらん。当に知るべし、是の人は已に道場に趣き、阿耨多羅三藐三菩提に近づいて道樹の下に坐せるなり。阿逸多、是の善男子・善女人の若しは坐し若しは立し若しは経行せん処、此の中には便ち塔を起つべし。一切の天人皆供養すること、仏の塔の如くすべし。
[解説]
阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。
爾時世尊。欲重宣此義。而説偈言。
爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言わく、
○第二品
若我滅度後 能奉持此経 斯人福無量 如上之所説
是則為具足 一切諸供養 以舎利起塔 七宝而荘厳
表刹甚高広 漸小至梵天 宝鈴千万億 風動出妙音
又於無量劫 而供養此塔 華香諸瓔珞 天衣衆妓楽
燃香油蘇燈 周常照明 悪世末法時 能持是経者
則為已如上 具足諸供養
斯の人の福無量なること 上の所説の如し
是れ則ち為れ 一切の諸の供養を具足し
舎利を以て塔を起て 七宝をもって荘厳し
表刹甚だ高広に 漸小にして梵天に至り
宝鈴千万億にして 風の動かすに妙音を出し
又無量劫に於て 此の塔に
華香諸の瓔珞 天衣衆の妓楽を供養し
香油蘇燈を燃して 周・して常に照明するなり
悪世末法の時 能く是の経を持たん者は
則ち為れ已に上の如く 諸の供養を具足するなり
○第三品
若能持此経 則如仏現在
以牛頭栴檀 起僧坊供養 堂有三十二 高八多羅樹
上饌妙衣服 牀臥皆具足 百千衆住処 園林諸浴池
経行及禅窟 種種皆厳好
若し我が滅度の後に 能く此の経を奉持せん
若し能く此の経を持たんは 則ち仏の現在に
牛頭栴檀を以て 僧坊を起てて供養し
堂三十二あって 高さ八多羅樹
上饌妙なる衣服 牀臥皆具足し
百千衆の住処 園林諸の浴池
経行及び禅窟 種々に皆厳好にするが如し
○第四品
若有信解心 受持読誦書
若復教人書 及供養経巻 散華香抹香 以須曼瞻蔔
阿提目多伽 薫油常燃之 如是供養者 得無量功徳
如虚空無辺 其福亦如是 況復持此経 兼布施持戒
忍辱楽禅定 不瞋不悪口
若し信解の心あって 受持し読誦し書き
若しは復人をしても書かしめ 及び経巻を供養し
華香抹香を散じ 須曼瞻蔔
阿提目多伽の 薫油を以て常に之を燃さん
是の如く供養せん者は 無量の功徳を得ん
虚空の無辺なるが如く 其の福も亦是の如し
況んや復此の経を持って 兼ねて布施持戒し
忍辱にして禅定を楽い 瞋らず悪口せざらんをや
○第五品
恭敬於塔廟 謙下諸比丘
遠離自高心 常思惟智慧 有問難不瞋 随順為解説
若能行是行 功徳不可量 若見此法師 成就如是徳
応以天華散 天衣覆其身 頭面接足礼 生心如仏想
又応作是念 不久詣道場 得無漏無為 広利諸天人
其所住止処 経行若坐臥 乃至説一偈 是中応起塔
荘厳令妙好 種種以供養 仏子住此地 則是仏受用
常在於其中 経行若坐臥
塔廟を恭敬し 諸の比丘に謙下して
自高の心を遠離し 常に智慧を思惟し
問難することあらんに瞋らず 随順にして為に解説せん
若し能く是の行を行ぜば 功徳量るべからず
若し此の法師の 是の如き徳を成就せるを見ては
天華を以て散じ 天衣を其の身に覆い
頭面に足を接して礼し 心を生じて仏の想の如くすべし
又是の念を作すべし 久しからずして道場に詣して
無漏無為を得 広く諸の天人を利せんと
其の所住止の処 経行し若しは坐臥し
乃至一偈をも説かん 是の中には塔を起てて
荘厳し妙好ならしめて 種々に以て供養すべす
仏子此の地に住すれば 則ち是れ仏受用しまもう
常に其の中に在して 経行し若しは坐臥したまわん
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