『法華経』には六訳三存といって、古来6種の漢文への訳出があり、
(1)『正法華経』(286年訳出) 竺法護訳
(2)『妙法蓮華経』(406年訳出) 鳩摩羅什訳
(3)『添品妙法蓮華経』(601年訳出) 闍那崛多・達摩笈多訳
の3種が現在に伝わっている。なかでも、鳩摩羅什が訳した『妙法蓮華経』は名訳であり、『法華経』のなかでも圧倒的に流布した。『法華経』といえば一般に『妙法蓮華経』をさす。
この『妙法蓮華経』は中国の隋の時代の高僧である天台大師智(538-597)の法華経中心とした仏教へとつながり、日本の伝教大師最澄(天台宗)や日蓮聖人(1222-82)の仏教へとつながる。また、天台大師智とほぼ同じ時代、日本の聖徳太子(574-622)も羅什訳の『妙法蓮華経』を読んで有名な『法華義疏』を著作された。
このように羅什訳の『法華経』は中国、韓国、日本など東アジアに多大な影響を与えるに至った。