妙法蓮華経如来寿量品第十六


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科段

正説・広開近顕遠断疑生信

誡信

◎三誡
◎三請
◎重請
◎重誡

正答

長行

法説

◎過去益物

○執近の情を出す
○破近顕遠

◎現在益物

○機感
○応化

◎総結不虚

○諸仏の出世権実遠近説必ず次第あり
○皆度生の為なり
○皆虚妄に非ず

譬説

◎開譬

良医治子

○医師遠行
○還已復去

治子不虚

◎合譬

○過去の益物に合す
○現在の益物に合す
○未来の益物に合す

偈頌

◎法説

○三世益物

○総結不虚

◎譬説

○開譬

○合譬

 

本門・正宗分・正説・正開近顕遠・広開近顕遠断疑生信

妙法蓮華経如来寿量品第十六

誡信

◎三誡

爾時仏告諸菩薩。及一切大衆。諸善男子。汝等当信解。如来誠諦之語。復告大衆。汝等当信解。如来誠諦之語。又復告諸大衆。汝等当信解。如来誠諦語。

 爾の時に仏、諸の菩薩及び一切の大衆に告げたまわく、 諸の善男子、汝等当に如来の誠諦の語を信解すべし。復大衆に告げたまはく、汝等当に如来の誠諦の語を信解すべし。 又復諸の大衆に告げたまはく、汝等当に如来の誠諦の語を信解すべし。

 

◎三請

是時菩薩大衆。弥勒為首。合掌白仏言。世尊唯願説之。我等当信受仏語。

 是の時に菩薩大衆、弥勒を首として、合掌して仏に白して言さく、世尊唯願わくは之を説きたまえ。我等当に仏の語を信受したてまつるべし。

 

◎重請

如是三白已復言。唯願説之。我等当信受仏語。

 是の如く三たび白し已って復言さく、唯願わくは之を説きたまえ。我等当に仏の語を信受したてまつるべし。

 

◎重誡

爾時世尊。知諸菩薩。三請不止。而告之言。汝等諦聴。如来秘密。神通之力。

 爾の時に世尊、諸の菩薩の三たび請じて止まざることを知しめして、之に告げて言わく、汝等諦かに聴け、如来の秘密・神通の力を。

 

 

※重誡の切り目は底本を無視した。

正答

長行


法説
◎三世益物・過去益物

 ○出執近情 (執近の情を出す)

一切世間。天人。及阿修羅。皆謂今釈迦牟尼仏。出釈氏宮。去伽耶城不遠。坐於道場。得阿耨多羅三藐三菩提。

 一切世間の天・人及び阿修羅は、皆今の釈迦牟尼仏釈氏の宮を出でて伽耶城を去ること遠からず、道場に坐して阿耨多羅三藐三菩提を得たりと謂えり。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

 ○破近顕遠

  △法譬顕遠

   ×法説顕遠

然善男子。我実成仏已来。無量無辺。百千万億。那由他劫。

 然るに善男子、我実に成仏してより已来無量無辺百千万億那由他劫なり。

 

   ×挙譬格量

    ●挙譬問

譬如五百千万億那由他。阿僧祇。三千大千世界。仮使有人。抹為微塵。過於東方。五百千万億。那由他阿僧祇国。乃下一塵。如是東行。尽是微塵。諸善男子。意於云何。是諸世界。可得思惟校計。知其数不。

 譬えば五百千万億那由他阿僧祇の三千大千世界を、仮使人あって抹して微塵と為して、東方五百千万億那由他阿僧祇の国を過ぎて乃ち一塵を下し、是の如く東に行いて是の微塵を尽くさんが如き、諸の善男子、意に於て云何、是の諸の世界は思惟し校計して其の数を知ることを得べしや不や。

 

弥勒菩薩等。倶白仏言。世尊。是諸世界。無量無辺。非算数所知。亦非心力所及。一切声聞。辟支仏。以無漏智。不能思惟。知其限数。我等住阿惟越致地。於是事中。亦所不達。世尊。如是諸世界。無量無辺。

 弥勒菩薩等倶に仏に白して言さく、世尊、是の諸の世界は無量無辺にして、算数の知る所に非ず、亦心力の及ぶ所に非ず。一切の声聞・辟支仏、無漏智を以ても思惟して其の限数を知ること能わじ。我等阿惟越致地に住すれども、是の事の中に於ては亦達せざる所なり。世尊、是の如き諸の世界無量無辺なり。

 

    ●合顕遠

爾時仏告。大菩薩衆。諸善男子。今当分明。宣語汝等。是諸世界。若著微塵。及不著者。尽以為塵。一塵一劫。我成仏已来。復過於此。百千万億。那由他。阿僧祇劫。

 爾の時に仏、大菩薩衆に告げたまわく、諸の善男子、今当に分明に汝等に宣語すべし。是の諸の世界の若しは微塵を著き及び著かざる者を尽く以て塵と為して、一塵を一劫とせん。我成仏してより已来、復此れに過ぎたること百千万億那由他阿僧祇劫なり。

 

  △益物所宜

   ×益物処

自従是来。我常在此。娑婆世界。説法教化。亦於余処。百千万億。那由他阿僧祇国。導利衆生。

 是れより来、我常に此の娑婆世界に在って説法教化す。亦余処の百千万億那由他阿僧祇の国に於ても衆生を導利す。

 

   ×払釈上疑

諸善男子。於是中間。我説燃燈仏等。又復言其。入於涅槃。如是皆以。方便分別。

 諸の善男子、是の中間に於て我燃燈仏等と説き、又復其れ涅槃に入ると言いき。是の如きは皆方便を以て分別せしなり。

 

   ×正明益物所宜

    ●感応

諸善男子。若有衆生。来至我所。我以仏眼。観其信等。諸根利鈍。随所応度。

 諸の善男子、若し衆生あって我が所に来至するには、我仏眼を以て其の信等の諸根の利鈍を観じて、度すべき所に随って、

 

    ●施化・形益 非生現在

処処自説。名字不同。年紀大小。亦復現言。当入涅槃。

 処処に自ら名字の不同・年紀の大小を説き、亦復現じて当に涅槃に入るべしと言い、

 

    ●施化・声益

又以種種方便。説微妙法。

 又種々の方便を以て微妙の法を説いて、

 

    ●得形声二益歓喜

能令衆生。発歓喜心。

 能く衆生をして歓喜の心を発さしめき。

 


◎三世益物・現在益物

 ○機感

諸善男子。如来見諸衆生。楽於小法。徳薄垢重者。

 諸の善男子、如来諸の衆生の小法を楽える徳薄垢重の者を見ては、

 

 ○応化


 非生現生

  △現生

為是人説。我少出家。得阿耨多羅三藐三菩提。

 是の人の為に我少くして出家し阿耨多羅三藐三菩提を得たりと説く。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

  △非生

然我実成仏已来。久遠若斯。但以方便。教化衆生。令入仏道。作如是説。

 然るに我実に成仏してより已来久遠なること斯の若し。但方便を以て衆生を教化して、仏道に入らしめんとして是の如き説を作す。

 

  △形声益

諸善男子。如来所演経典。皆為度脱衆生。或説己身。或説他身。或示己身。或示他身。或示己事。或示他事。

 諸の善男子、如来の演ぶる所の経典は、皆衆生を度脱せんが為なり。或は己身を説き、或は他身を説き、或は己身を示し、或は他身を示し、或は己事を示し、或は他事を示す。

 

  △利益不虚

   ×標

諸所言説。皆実不虚。所以者何。

 諸の言説するところは皆実にして虚しからず。所以は何ん、

 

   ×照理不虚

如来如実知見。三界之相。無有生死。若退若出。亦無在世。及滅度者。非実。非虚。非如。非異。不如三界。見於三界。如斯之事。如来明見。無有錯謬。

 如来は如実に三界の相を知見す。生死の若しは退、若しは出あることなく、亦在世及び滅度の者なし。実に非ず、虚に非ず、如に非ず、異に非ず、三界の三界を見るが如くならず。斯の如きの事、如来明かに見て錯謬あることなし。

 

   ×称機不虚

以諸衆生。有種種性。種種欲。種種行。種種憶想。分別故。欲令生諸善根。以若干因縁。譬喩言辞。種種説法。所作仏事。未曾暫廃。

 諸の衆生、種々の性・種々の欲・種々の行・種々の憶想分別あるを以ての故に、諸の善根を生ぜしめんと欲して、若干の因縁・譬喩・言辞を以て種々に法を説く。所作の仏事未だ曾て暫くも廃せず。

 


 非滅現滅

  △本実不滅

   ×果常住

如是我成仏已来。甚大久遠。寿命無量。阿僧祇劫。常住不滅。

 是の如く我成仏してより已来甚だ大に久遠なり。寿命無量阿僧祇劫常住にして滅せず。

 

   ×挙因況果

諸善男子。我本行菩薩道。所成寿命。今猶未尽。復倍上数。

 諸の善男子、我本菩薩の道を行じて成ぜし所の寿命、今猶お未だ尽きず。復上の数に倍せり。

 

  △迹中唱滅

然今非実滅度。而便唱言。当取滅度。

 然るに今実の滅度に非れども、而も便ち唱えて当に滅度を取るべしと言う。

 

  △現滅利益

   ×不滅衆生有損

如来以是方便。教化衆生。所以者何。若仏久住於世。薄徳之人。不種善根。貧窮下賎。貧著五欲。入於憶想。妄見網中。若見如来。常在滅。便起恣。而懐厭怠。不能生於。難遭之想。恭敬之心。

 如来是の方便を以て衆生を教化す。所以は何ん、若し仏久しく世に住せば、薄徳の人は善根を種えず。貧窮下賎にして五欲に貧著し、憶想妄見の網の中に入りなん。若し如来常に在って滅せずと見ば、便ち・恣を起して厭怠を懐き、難遭の想、恭敬の心を生ずること能わず。

 

   ×唱滅於物有益

    ●仏難値歎

是故如来。以方便説。比丘当知。諸仏出世。難可値遇。

 是の故に如来方便を以て説く、比丘当に知るべし、諸仏の出世には値遇すべきこと難し。

 

    ●釈難値意

所以者何。諸薄徳人。過無量。百千万億劫。或有見仏。或有見者。以此事故。我作是言。諸比丘。如来難可得見。斯衆生等。聞如是語。必当生於。難遭之想。心懐恋慕。渇仰於仏。便種善根。是故如来。雖不実滅。而言滅度。

 所以は何ん、諸の薄徳の人は無量百千万億劫を過ぎて、或は仏を見るあり、或は見ざる者あり。此の事を以ての故に我是の言をなす、諸の比丘、如来は見ること得べきこと難しと。斯の衆生等是の如き語を聞いては、必ず当に難遭の想を生じ、心に恋慕を懐き、仏を渇仰して便ち善根を種ゆべし。是の故に如来実に滅せずと雖も而も滅度すと言う。

 


◎総結不虚

 ○諸仏出世権実遠近説必有次第 (諸仏の出世権実遠近説必ず次第有り)

又善男子。諸仏如来。法皆如是。

 又善男子、諸仏如来は法皆是の如し。

 

 ○皆為度生 (皆度生の為なり)

為度衆生。

 衆生を度せんが為なれば

 

 ○皆非虚妄 (○皆虚妄に非ず)

皆実不虚。

 皆実にして虚しからず。

 


譬説

◎開譬


 良医治子譬是譬上三世応化所宜

  ○医師遠行是譬過去益物

譬如良医。智慧聡達。明練方薬。善治衆病。其人多諸子息。若十二十。乃至百数。以有事縁。遠至余国。

 譬えば良医の智慧聡達にして、明かに方薬に練じ善く衆病を治す。其の人諸の子息多し、若しは十・二十乃至百数なり。事の縁あるを以て遠く余国に至りぬ。

 

  ○還已復去

   △譬機感

諸子於後。飲他毒薬。薬発悶乱。宛転于地。

 諸の子後に他の毒薬を飲む。薬発し悶乱して地に宛転す。

 

   △譬応化

    ×非生現生

     ●形益

是時其父。還来帰家。諸子飲毒。或失本心。或不失者。遥見其父。皆大歓喜。拝跪問訊。善安穏帰。我等愚痴。誤服毒薬。願見救療。更賜寿命。

 是の時に其の父還り来って家に帰りぬ。諸の子毒を飲んで、或は本心を失える或は失わざる者あり。遥かに其の父を見て皆大に歓喜し、拝跪して問訊すらく、善く安穏に帰りたまえり。我等愚痴にして誤って毒薬を服せり。願わくは救療せられて更に寿命を賜えと。

 

     ●声益

父見子等。苦悩如是。依諸経方。求好薬草。色香美味。皆悉具足。擣篩和合。与子令服。而作是言。此大良薬。色香美味。皆悉具足。汝等可服。速除苦悩。無復衆患。

 父、子等の苦悩すること是の如くなるを見て、諸の経方に依って好き薬草の色・香・美味皆悉く具足せるを求めて、擣篩和合して子に与えて服せしむ。而して是の言を作さく、此の大良薬は色・香・美味皆悉く具足せり。汝等服すべし。速かに苦悩を除いて復衆の患なけんと。

 

     ●利益不虚

其諸子中。不失心者。見此良薬。色香具好。即便服之。病尽除愈。

 其の諸の子の中に心を失わざる者は、此の良薬の色・香倶に好きを見て即ち之を服するに、病尽く除こり愈えぬ。

 

    ×非滅現滅 不久応化

     ●唱死之由

余心失者。見其父来。雖亦歓喜問訊。求索治病。然与其薬。而不肯服。所以者何。毒気深入。失本心故。於此好色香薬。而謂不美。父作是念。此子可愍。為毒所中。心皆顛倒。雖見我喜。求索救療。如是好薬。而不肯服。

 余の心を失える者は其の父の来れるを見て、亦歓喜し問訊して病を治せんことを求索むと雖も、然も其の薬を与うるに而も肯えて服せず。所以は何ん、毒気深く入って本心を失えるが故に、此の好き色・香ある薬に於て美からずと謂えり。父是の念を作さく、此の子愍むべし、毒に中られて心皆顛倒せり。我を見て喜んで救療を求索むと雖も、是の如き好き薬を而も肯て服せず。

 

     ●正唱応化

我今当設方便。令服此薬。即作是言。汝等当知。我今衰老。死時已至。是好良薬。今留在此。汝可取服。勿憂不差。作是教已。復至他国。遣使還告。汝父已死。

 我今当に方便を設けて此の薬を服せしむべし。 即ち是の言を作さく、汝等当に知るべし、我今衰老して死の時已に至りぬ。是の好き良薬を今留めて此に在く。汝取って服すべし、差えじと憂うることなかれと。是の教を作し已って復他国に至り、使を遣わして還って告ぐ、汝が父已に死しぬと。

 

    ×非滅現滅 諸子醒悟

     ●現滅利益

是時諸子。聞父背喪。心大憂悩。而作是念。若父在者。慈愍我等。能見救護。今者捨我。遠喪他国。自惟孤露。無復恃怙。

 是の時に諸の子、父背喪せりと聞いて心大に憂悩して、是の念を作さく、若し父在しなば我等を慈愍して能く救護せられまし。今者我を捨てて遠く他国に喪したまいぬ。自ら惟るに孤露にして復恃怙なし。

 


  治子不虚 (底本本文に場所が指定されていないため推定)

常懐悲感。心遂醒悟。乃知此薬。色香美味。即取服之。毒病皆愈。

 常に悲感を懐いて心遂に醒悟し、乃ち此の薬の色・香・味美きを知って、即ち取って之を服するに毒の病皆愈ゆ。

 

     ●未来応化

其父聞子。悉已得差。尋便来帰。咸使見之。

 其の父、子悉く已に差ゆることを得つと聞いて、尋いで便ち来り帰って咸く之に見えしめんが如し。

 

     ●三世益物不虚

諸善男子。於意云何。頗有人能。説此良医。虚妄罪不。不也世尊。

  諸の善男子、意に於て云何、頗し人の能く此の良医の虚妄の罪を説くあらんや不や。不也、世尊。

 

◎合譬

 ○合過去益物 (過去の益物に合す)

仏言。我亦如是。成仏已来。無量無辺。百千万億。那由他阿僧祇劫。為衆生故。

 仏の言わく、我も亦是の如し。成仏してより已来、無量無辺百千万億那由他阿僧祇劫なり。

 

 ○合現在益物 (現在の益物に合す)

以方便力。言当滅度。

 衆生の為の故に方便力を以て当に滅度すべしと言う。

 

 ○合益物不虚 (益物の不虚に合す)

亦無有能。如法説我。虚妄過者。

 亦能く法の如く我が虚妄の過を説く者あることなけん。

 

偈頌

爾時世尊。欲重宣此義。而説偈言

 爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言わく、

 

◎法説

 ○三世益物

  △過去

   ×現在已久

 自我得仏来 所経諸劫数 無量百千万 億載阿僧祇

  我仏を得てより来 経たる所の諸の劫数
  無量百千万 億載阿僧祇なり

 

   ×中間益物

 常説法教化 無数億衆生 令入於仏道 爾来無量劫

  常に法を説いて 無数億の衆生を教化して
  仏道に入らしむ 爾しより来無量劫なり

 

   ×常住此所

 為度衆生故 方便現涅槃 而実不滅度 常住此説法
 我常住於此 以諸神通力 令顛倒衆生 雖近而不見

  衆生を度せんが為の故に 方便して涅槃を現ず
  而も実には滅度せず 常に此に住して法を説く
  我常に此に住すれども 諸の神通力を以て
  顛倒の衆生をして 近しと雖も而も見ざらしむ

 

  △現在

   ×非生現生

 衆見我滅度 広供養舎利 咸皆懐恋慕 而生渇仰心
 衆生既信伏 質直意柔軟 一心欲見仏 不自惜身命
 時我及衆僧 倶出霊鷲山

  衆我が滅度を見て 広く舎利を供養し
  咸く皆恋慕を懐いて 渇仰の心を生ず
  衆生既に信伏し 質直にして意柔軟に
  一心に仏を見たてまつらんと欲して 自ら身命を惜まず
  時に我及び衆僧 倶に霊鷲山に出ず

 

   ×非滅現滅

 我時語衆生 常在此不滅
 以方便力故 現有滅不滅 余国有衆生 恭敬信楽者
 我復於彼中 為説無上法 汝等不聞此 但謂我滅度

  我時に衆生に語る 常に此にあって滅せず
  方便力を以ての故に 滅不滅ありと現ず
  余国に衆生の 恭敬し信楽する者あれば
  我復彼の中に於て 為に無上の法を説く
  汝等此れを聞かずして 但我滅度すと謂えり

 

  △未来

   ×未来機感

 我見諸衆生 没在於苦海 故不為現身 令其生渇仰
 因其心恋慕 乃出為説法

  我諸の衆生を見れば 苦海に没在せり
  故に為に身を現ぜずして 其れをして渇仰を生ぜしむ
  其の心恋慕するに因って 乃ち出でて為に法を説く

 

   ×常住不滅

 神通力如是 於阿僧祇劫
 常在霊鷲山 及余諸住処 衆生見劫尽 大火所焼時
 我此土安穏 天人常充満 園林諸堂閣 種種宝荘厳
 宝樹多華果 衆生所遊楽 諸天撃天鼓 常作衆伎楽
 雨曼陀羅華 散仏及大衆

  神通力是の如し 阿僧祇劫に於て
  常に霊鷲山 及び余の諸の住処にあり
  衆生劫尽きて 大火に焼かるると見る時も
  我が此の土は安穏にして 天人常に充満せり
  園林諸の堂閣 種々の宝をもって荘厳し
  宝樹華果多くして 衆生の遊楽する所なり
  諸天天鼓を撃って 常に衆の妓楽を作し
  曼陀羅華を雨らして 仏及び大衆に散ず

 

   ×不見因縁

 我浄土不毀 而衆見焼尽
 憂怖諸苦悩 如是悉充満 是諸罪衆生 以悪業因縁
 過阿僧祇劫 不聞三宝名

  我が浄土は毀れざるに 而も衆は焼け尽きて
  憂怖諸の苦悩 是の如き悉く充満せりと見る
  是の諸の罪の衆生は 悪業の因縁を以て
  阿僧祇劫を過ぐれども 三宝の名を聞かず

 

   ×得見因縁

 諸有修功徳 柔和質直者
 則皆見我身 在此而説法 或時為此衆 説仏寿無量
 久乃見仏者 為説仏難値 我智力如是 慧光照無量
 寿命無数劫 久修業所得

  諸の有ゆる功徳を修し 柔和質直なる者は
  則ち皆我が身 此にあって法を説くと見る
  或時は此の衆の為に 仏寿無量なりと説く
  久しくあって乃し仏を見たてまつる者には 為に仏には値い難しと説く
  我が智力是の如し 慧光照すこと無量に
  寿命無数劫 久しく業を修して得る所なり

 

 ○総結不虚

 汝等有智者 勿於此生疑
 当断令永尽 仏語実不虚

  汝等智あらん者 此に於て疑を生ずることなかれ
  当に断じて永く尽きしむべし 仏語は実にして虚しからず

 

◎譬説

 ○開譬

  △過去

 如医善方便

  医の善き方便をもって

 

  △現在

 為治狂子故 実在而言死

  狂子を治せんが為の故に
  実には在れども而も死すというに

 

  △不虚

 無能説虚妄

  能く虚妄を説くものなきが如く

 

 ○合譬

  △合過去 (過去に合す)

 我亦為世父 救諸苦患者

  我も亦為れ世の父 諸の苦患を救う者なり

 

  △合現在 (現在に合す)

 為凡夫顛倒 実在而言滅 以常見我故 而生恣心
 放逸著五欲 堕於悪道中 我常知衆生 行道不行道
 随応所可度 為説種種法

  凡夫の顛倒せるを為て 実には在れども而も滅すと言う
  常に我を見るを以ての故に 而も・恣の心を生じ
  放逸にして五欲に著し 悪道の中に堕ちなん
  我常に衆生の 道を行じ道を行ぜざるを知って
  度すべき所に随って 為に種々の法を説く

 

  △合不虚 (不虚に合す)

 毎自作是念 以何令衆生
 得入無上道 速成就仏身

  毎に自ら是の念を作す 何を以てか衆生をして
  無上道に入り 速かに仏身を成就することを得せしめんと




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