妙法蓮華経随喜功徳品第十八


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科段

本門・流通分明初品因功徳勧流通

◎五品を列ねて四品の功徳を格量す
 (妙法蓮華経分別功徳品第十七)

◎初品の功徳を格量す

 ○弥勒の問い

  △長行
  △偈頌

 ○如来の答説

長行

 △内心に随喜の人を明す

×展伝して相教う
×格量の本
×意を挙げて問う
×誠実に答う
×正しく格量す

 △直に外の聴法の人を明かす

×自ら往いて聴く
×座を分ちて聴かしむ
×他を勧めて聴かしむ
×具に聴いて修す

偈頌

 △内心に随喜の人

×五十人
×格量の本
×正しく格量す

 △外の聴法の人

×他を勧む
×自ら往く
×座を分つ
×聴いて修す

 

本門・流通分明初品因功徳勧流通

妙法蓮華経随喜功徳品第十八

◎格量初品功徳す (初品の功徳を格量す)

○弥勒問 (弥勒の問い)

△長行

爾時弥勒菩薩摩訶薩。白仏言。世尊。若有善男子。善女人。聞是法華経。随喜者。得幾所福。

 爾の時に弥勒菩薩摩訶薩、仏に白して言さく、世尊、若し善男子・善女人あって是の法華経を聞きたてまつりて随喜せん者は、幾所の福をか得ん。

 

△偈頌

而説偈言

 世尊滅度後 其有聞是経 若能随喜者 為得幾所福

 而も偈を説いて言さく、

  世尊滅度の後に 其れ是の経を聞くことあって
  若し能く随喜せん者は 幾所の福をか得べき

 

○如来答説 (如来の答説)


長行

△明内心随喜人 (内心に随喜の人を明す)

 ×展伝相教 (展伝して相教う)

爾時仏告。弥勒菩薩摩訶薩。阿逸多。如来滅後。若比丘。比丘尼。優婆塞。優婆夷。及余智者。若長。若幼。聞是経随喜已。従法会出。至於余処。若在僧坊。若空閑地。若城邑巷陌。聚落。田里。如其所聞。為父母宗親。善友知識。随力演説。是諸人等。聞已随喜。復行転教。余人聞已。亦随喜転教。如是展転。至第五十。

 爾の時に仏、弥勒菩薩摩訶薩に告げたまわく、阿逸多、如来の滅後に、若し比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷及び余の智者、若しは長若しは幼、是の経を聞いて随喜し已って、法会より出でて余処に至らん。若しは僧坊にあり、若しは空閑の地、若しは城邑・巷陌・聚落・田里にして、其の所聞の如く、父・母・宗親・善友・知識の為に力に随って演説せん。是の諸人等聞き已って随喜して復行いて転教せん、余の人聞き已って亦随喜して転教せん、是の如く展転して第五十に至らん。

[解説]

比丘(びく)・比丘尼(びくに)・優婆塞(うばそく)・優婆夷(うばい) 四衆。比丘は男性の出家した僧侶。比丘尼は出家した尼僧。優婆塞は在家の男性信徒。優婆夷は在家の女性信徒。

 

 ×格量本 (格量の本)

阿逸多。其第五十。善男子。善女人。随喜功徳。我今説之。汝当善聴。若四百万億。阿僧祇世界。六趣四生衆生。卵生。胎生。湿生。化生。若有形。無形。有想。無想。非有想。非無想。無足。二足。四足。多足。如是等在。衆生数者。有人求福。随其所欲。娯楽之具。皆給与之。一一衆生。与満閻浮提。金銀。瑠璃。ィゥ。碼碯。珊瑚。琥珀。諸妙珍宝。及象馬車乗。七宝所成。宮殿楼閣等。是大施主。如是布施。満八十年已。而作是念。我已施衆生。娯楽之具。随意所欲。然此衆生。皆已衰老。年過八十。髪白面皺。将死不久。我当以仏法。而訓導之。即集此衆生。宣布法化。示教利喜。一時皆得。須陀纉ケ。斯陀含道。阿那含道。阿羅漢道。尽諸有漏。於深禅定。皆得自在。具八解脱。

 阿逸多、其の第五十の善男子・善女人の随喜の功徳を我今之を説かん、汝当に善く聴くべし。若し四百万億阿僧祇の世界の六趣四生の衆生、卵生・胎生・湿生・化生・若しは有形・無形・有想・無想・非有想・非無想・無足・二足・四足・多足、是の如き等の衆生の数にあらん者に、人あって福を求めて、其の所欲に随って娯楽の具皆之に給与せん。一一の衆生に、閻浮提に満らん金・銀・瑠璃・・・・碼碯・珊瑚・琥珀・諸の妙なる珍宝、及び象馬・車乗・七宝所成の宮殿・楼閣等を与えん。是の大施主、是の如く布施すること八十年を満ち已って、是の念を作さく、
 我已に衆生に娯楽の具を施すこと意の所欲に随う。然るに此の衆生皆已に衰老して、年八十に過ぎて髪白く面皺んで、将に死せんこと久しからじ。我当に仏法を以て之を訓導すべし。
 即ち此の衆生を集めて、宣布法化し示教利喜して、一時に皆須陀・道・斯陀含道・阿那含道・阿羅漢道を得、諸の有漏を尽し、深禅定に於て皆自在を得、八解脱を具せしめん。

須陀(しゅだおん)  サンスクリット srota-apanna の音写。声聞四果の第一。三界の見惑(思想的な迷い)を断じて得られる境地。

斯陀含(しだごん) サンスクリット sakrd-agamin の音写。声聞四果の第二。貪欲・瞋恚・愚痴の三毒(煩悩)が薄くなった境地。

阿那含(あなごん) サンスクリット anagamin の音写。声聞四果の第三。欲界の煩悩を断じ尽して再び欲界に生を受けない位。

阿羅漢(あらかん) サンスクリット arhan の音写。応供(おうぐ)と漢訳される。尊敬される人、供養するに値する聖者という意味。小乗仏教の修行者たる声聞(しょうもん)の最高位。

 ×挙意問 (意を挙げて問う)

於汝意云何。是大施主。所得功徳。寧為多不。

 汝が意に於て云何。是の大施主の所得の功徳寧ろ多しとせんや不や。

 

 ×誠実答 (誠実に答う)

弥勒白仏言。世尊。是人功徳。甚多無量無辺。若是施主。但施衆生。一切楽具。功徳無量。何況令得。阿羅漢果。

 弥勒、仏に白して言さく、世尊、是の人の功徳甚だ多くして無量無辺なり。若し是の施主、但衆生に一切の楽具を施さんすら功徳無量ならん。何に況んや阿羅漢果を得せしめんをや。

阿羅漢(あらかん) サンスクリット arhan の音写。応供(おうぐ)と漢訳される。尊敬される人、供養するに値する聖者という意味。小乗仏教の修行者たる声聞(しょうもん)の最高位。

 ×正格量 (正しく格量す)

仏告弥勒。我今分明語汝。是人以一切楽具。施於四百万億。阿僧祇世界。六趣衆生。又令得阿羅漢果。所得功徳。不如是第五十人。聞法華経一偈。随喜功徳。百分千分。百千万億分。不及其一。乃至算数譬喩。所不能知。阿逸多。如是第五十人。展転聞法華経。随喜功徳。尚無量無辺。阿僧祇。何況最初。於会中聞随喜者。其福復勝。無量無辺阿僧祇。不可得比。

 仏、弥勒に告げたまわく、我今分明に汝に語る、是の人一切の楽具を以て四百万億阿僧祇の世界の六趣の衆生に施し、又阿羅漢果を得せしめん。所得の功徳は是の第五十の人の法華経の一偈を聞いて随喜せん功徳には如かじ。百分・千分・百千万億分にして其の一にも及ばじ。乃至算数・譬喩も知ること能わざる所なり。阿逸多、是の如く第五十人の展転して法華経を聞いて随喜せん功徳、尚お無量無辺阿僧祇なり。何に況んや、最初会中に於て聞いて随喜せん者をや。其の福復勝れたること無量無辺阿僧祇にして、比ぶること得べからず。

阿羅漢(あらかん) サンスクリット arhan の音写。応供(おうぐ)と漢訳される。尊敬される人、供養するに値する聖者という意味。小乗仏教の修行者たる声聞(しょうもん)の最高位。

△直明外聴法人 (直に外の聴法の人を明かす)

 ×自往聴 (自ら往いて聴く)

又阿逸多。若人為是経故。往詣僧坊。若坐若立。須臾聴受。縁是功徳。転身所生。得好上妙。象馬車乗。珍宝輦輿。及乗天宮。

 又阿逸多、若し人是の経の為の故に僧坊に往詣して、若しは坐し若しは立ち須臾も聴受せん。是の功徳に縁って、身を転じて生れん所には好き上妙の象馬・車乗・珍宝の輦輿を得、及び天宮に乗ぜん。

 

 ×分座聴 (座を分ちて聴かしむ)

若復有人。於講法処坐。更有人来。勧令坐聴。若分座令坐。是人功徳。転身得帝釈坐処。若梵天王坐処。若転輪聖王。所坐之処。

 若し復人あって講法の処に於て坐せん。更に人の来ることあらんに勧めて坐して聴かしめ、若しは座を分つて坐しめん。是の人の功徳、身を転じて帝釈の坐処、若しは梵天王の坐処、若しは転輪聖王の所坐の処を得ん。

 

 ×勧他聴 (他を勧めて聴かしむ)

阿逸多。若復有人。語余人言。有経名法華。可共往聴。即受其教。乃至須臾間聞。是人功徳。身転得陀羅尼菩薩。共生一処。利根智慧。百千万世。終不ユ亜。口気不臭。舌常無病。口亦無病。歯不垢黒。不黄不疎。亦不欠落。不差不曲。唇不下垂。亦不苡k。不麁渋。不瘡蛛B亦不欠壊。亦不謗ラ。不厚不大。亦不フ黒。無諸可悪。鼻不銜閨B亦不曲戻。面色不黒。亦不狭長。亦不驪ネ。無有一切。不可喜相。唇舌牙歯。悉皆厳好。鼻修高直。面猊円満。眉高而長。額広平正。人相具足。世世所生。見仏聞法。信受教誨。

 阿逸多、若し復人あって余人に語っていわく、経あり法華と名けたてまつる、共に往いて聴くべしと。即ち其の教を受けて乃至須臾の間も聞かん。是の人の功徳は、身を転じて陀羅尼菩薩と共に一処に生ずることを得ん。利根にして智慧あらん。百千万世終に・唖ならず。口の気臭からず。舌常に病なく、口にも亦病なけん。歯は垢黒ならず、黄ならず、疎かず、亦欠落せず、差わず、曲らず。唇下垂せず、亦・縮ならず、麁渋ならず、瘡・ならず、亦欠壊ならず、亦・邪ならず、厚からず、大ならず、亦・黒ならず、諸の悪むべきことなけん。鼻・・ならず、亦曲戻ならず。面色黒からず、亦狭長ならず、亦・曲ならず、一切の喜うべからざる相あることなけん。唇・舌・牙・歯悉く皆厳好ならん。鼻修くして高直に、面猊円満し、眉高くして長く、額広く平正にして人相具足せん。世世に生れん所には仏を見たてまつり法を聞いて教誨を信受せん。

 

 ×具聴修 (具に聴いて修す)

阿逸多。汝且観是。勧於一人。令往聴法。功徳如此。何況一心。聴説読誦。而於大衆。為人分別。如説修行。

 阿逸多、汝且く是れを観ぜよ。一人を勧めて往いて法を聴かしむる功徳此の如し。何に況んや、一心に聴き説き読誦し、而も大衆に於て人の為に分別し、説の如く修行せんをや。

 


偈頌

爾時世尊。欲重宣此義。而説偈言

 爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言わく、

 

△内心随喜人 (内心に随喜の人)

 ×五十人

 若人於法会 得聞是経典 乃至於一偈 随喜為他説
 如是展転教 至於第五十

  若し人法会に於て 是の経典を聞くことを得て
  乃至一偈に於ても 随喜して他の為に説かん
  是の如く展転して教うること 第五十に至らん

 

 ×格量本 (格量の本)

 最後人獲福 今当分別之
 如有大施主 供給無量衆 具満八十歳 随意之所欲
 見彼衰老相 髪白而面皺 歯疎形枯渇 念其死不久
 我今応当教 令得於道果 即為方便説 涅槃真実法
 世皆不牢固 如水沫泡焔 汝等咸応当 疾生厭離心
 諸人聞是法 皆得阿羅漢 具足六神通 三明八解脱

  最後の人の福を獲んこと 今当に之を分別すべし
  如し大施主あって 無量の衆に供給すること
  具さに八十歳を満てて 意の所欲に随わん
  彼の衰老の相の 髪白くして面皺み
  歯疎き形枯渇せるを見て 其の死せんこと久しからじ
  我今応当に教えて 道果を得せしむべしと念うて
  即ち為に方便して 涅槃真実の法を説かん
  世は皆牢固ならざること 水沫泡焔の如し
  汝等咸く応当に 疾く厭離の心を生ずべし
  諸人是の法を聞いて 皆阿羅漢を得
  六神通 三明八解脱を具足せん

阿羅漢(あらかん) サンスクリット arhan の音写。応供(おうぐ)と漢訳される。尊敬される人、供養するに値する聖者という意味。小乗仏教の修行者たる声聞(しょうもん)の最高位。

 ×正格量 (正しく格量す) 

 最後第五十 聞一偈随喜 是人福勝彼 不可為譬喩
 如是展転聞 其福尚無量 何況於法会 初聞随喜者

  最後第五十の 一偈を聞いて随喜せん
  是の人の福彼れに勝れたること 譬喩を為すべからず
  是の如く展転して聞く 其の福尚お無量なり
  何に況んや法会に於て 初に聞いて随喜せん者をや

 

△外聴法人 (外の聴法の人)

 ×勧他 (他を勧む)

 若有勧一人 将引聴法華 言此経深妙 千万劫難遇
 即受教往聴 乃至須臾聞 斯人之福報 今当分別説
 世世無口患 歯不疎黄黒 唇不厚芟 無有可悪相
 舌不乾黒短 鼻高修且直 額広而平正 面目悉端厳
 為人所憙見 口気無臭穢 優鉢華之香 常従其口出

  若し一人を勧めて 将引して法華を聴かしむることあって
  言わん此の経は深妙なり 千万劫にも遇い難しと
  即ち教を受けて往いて聴くこと 乃至須臾も聞かん
  斯の人の福報 今当に分別し説くべし
  世世に口の患なく 歯疎き黄黒ならず
  唇厚く・欠ならず 悪むべき相あることなけん
  舌乾き黒短ならず 鼻高修にして且直からん
  額広くして平正に 面目悉く端厳にして
  人に見んと憙わるることを為ん 口の気臭穢なくして
  優鉢華の香 常に其の口より出でん

 

 ×自往 (自ら往く) ※底本本文には自在

 若故詣僧坊 欲聴法華経 須臾聞随喜 今当説其福
 後生天人中 得妙象馬車 珍宝之輦輿 及乗天宮殿

  若し故らに僧坊に詣いて 法華経を聴かんと欲して
  須臾も聞いて随喜せん 今当に其の福を説くべし
  後に天人の中に生れて 妙なる象馬車
  珍宝の輦輿を得 及び天の宮殿に乗ぜん

 

 ×分座 (座を分つ)

 若於講法処 勧人坐聴経 是福因縁得 釈梵転輪座

  若し講法の処に於て 人を勧めて坐して経を聴かしめん
  是の福の因縁をもって 釈梵転輪の座を得ん

 

 ×聴修 (聴いて修す)

 何況一心聴 解説其義趣 如説而修行 其福不可限

  何に況んや一心に聴き 其の義趣を解説し
  説の如く修行せんをや 其の福限るべからず



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