妙法蓮華経薬王菩薩本事品二十三


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科段

化他流通・苦行乗乗

菩薩の請問

◎通じて遊化を問う

◎別して苦行を問う

◎如来の答釈を請う

如来の決答

◎苦行を答う

事本

 △時節
 △仏声聞
 △国土の荘厳

本事

 △仏の説法
 △供養を修す
   現在
   未来
 △結会
 △厳修

◎経妙を歎ず

○能持の者を歎ず

○所持の法を歎ず

  △法体を歎ず
  △法用を歎ず

○持経の福を明す

  △全分持経を歎ず
  △別持一品の福
  △利益を得
  △多宝喜称す

流通分・付嘱流通三・次化他流通四・初勗弘法師苦行乗乗

妙法蓮華経薬王菩薩本事品第二十三

 (呉音 こく) つとめること

菩薩請問 (菩薩の請問)

◎通問遊化 (通じて遊化を問う)

爾時宿王華菩薩。白仏言。世尊。薬王菩薩。云何遊於。娑婆世界。

 爾の時に宿王華菩薩、仏に白して言さく、世尊、薬王菩薩は云何してか娑婆世界に遊ぶ。

 

◎別問苦行 (別して苦行を問う)

世尊是薬王菩薩。有若干百千万億。那由他。難行苦行。

 世尊、是の薬王菩薩は若干百千万億那由他の難行苦行あらん。

 

◎請如来答釈 (如来の答釈を請う)

善哉世尊。願少解説。諸天。龍神。夜叉。乾闥婆。阿修羅。迦楼羅。緊那羅。摩、羅伽。人非人等。又他国土。諸来菩薩。及此声聞衆。聞皆歓喜。

 善哉世尊、願わくは少し解説したまえ。諸の天・龍神・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩・羅伽・人非人等、又他の国土より諸の来れる菩薩及び此の声聞衆、聞いて皆歓喜せん。

 

如来決答 (如来の決答)

◎答苦行 (苦行を答う)

事本

爾時仏告。宿王華菩薩。

 爾の時に仏、宿王華菩薩に告げたまわく。

 

 △時節

乃往過去。無量恒河沙劫。

 乃往過去無量恒河沙劫に

 

 △仏声聞

有仏号。日月浄明徳如来。応供。正ェ知。明行足。善逝。世間解。無上士。調御丈夫。天人師。仏。世尊。其仏有八十億。大菩薩摩訶薩。七十二恒河沙。大声聞衆。仏寿四万二千劫。菩薩寿命亦等。彼国無有女人。地獄。餓鬼。畜生。阿修羅等。及以諸難。

 仏いましき、日月浄明徳如来・応供・正遍知・明行足・善逝・世間解・無上士・調御丈夫・天人師・仏・世尊と号けたてまつる。其の仏に八十億の大菩薩摩訶薩・七十二恒河沙の大声聞衆あり。仏の寿は四万二千劫、菩薩の寿命も亦等し。彼の国には女人・地獄・餓鬼・畜生・阿修羅等及び諸難あることなし。

 ※時節と仏声聞の境界について底本本文を無視した

 △国土荘厳 (国土の荘厳)

地平如掌。瑠璃所成。宝樹荘厳。宝帳覆上。垂宝華幡。宝瓶香炉。周ェ国界。七宝為臺。一樹一臺。其樹去臺。尽一箭道。此諸宝樹。皆有菩薩声聞。而坐其下。諸宝臺上。各有百億諸天。作天妓楽。歌歎於仏。以為供養。

 地の平かなること掌に如くにして、瑠璃の所成なり。宝樹荘厳し、宝帳上に覆い、宝の華幡を垂れ、宝瓶・香炉国界に周遍せり。七宝を臺と為して一樹に一臺あり。其の樹臺を去ること一箭道を尽くせり。此の諸の宝樹に皆菩薩・声聞あって其の下に坐せり。諸の宝臺の上に各百億の諸天あって天の妓楽を作し、仏を歌歎して以て供養を為す。

 

本事

 △仏説法 (仏の説法)

爾時彼仏。為一切衆生。憙見菩薩。及衆菩薩。諸声聞衆。説法華経。

 爾の時に彼の仏、一切衆生憙見菩薩及び衆の菩薩・諸の声聞衆の為に、法華経を説きたもう。

 

 △修供養 (供養を修す)

  現在

   ×苦行得法 (苦行して法を得る)

是一切衆生。憙見菩薩。楽習苦行。於日月浄明徳仏法中。精進経行。一心求仏。満万二千歳已。得現一切色身三昧。

 是の一切衆生憙見菩薩楽って苦行を習い、日月浄明徳仏の法の中に於て、精進経行して一心に仏を求むること、万二千歳を満じ已って、現一切色身三昧を得。

 

   ×作念報恩

    ●以三昧力

得此三昧已。心大歓喜。即作念言。我得現一切色身三昧。皆是得聞。法華経力。我今当供養。日月浄明徳仏。及法華経。即時入是三昧。於虚空中。雨曼陀羅華。摩訶曼陀羅華。細抹堅黒栴檀。満虚空中。如雲而下。又雨海此岸。栴檀之香。此香六銖。価直娑婆世界。以供養仏。

 此の三昧を得已って、心大に歓喜して即ち念言を作さく、我現一切色身三昧を得たる、皆是れ法華経を聞くことを得る力なり。我今当に日月浄明徳仏及び法華経を供養すべし。即時に是の三昧に入って、虚空の中に於て曼陀羅華・摩訶曼陀羅華・細抹堅黒の栴檀を雨らし、虚空の中に満てて雲の如くにして下し、又海此岸の栴檀の香を雨らす。此の香の六銖は価直娑婆世界なり、以て仏に供養す。

 

    ●以身力

作是供養已。従三昧起。而自念言。我雖以神力。供養於仏。不如以身供養。

 是の供養を作し已って、三昧より起って、自ら念言すらく、我神力を以て仏を供養すと雖も身を以て供養せんには如かじ。

 

     (焼身)

即服諸香。栴檀薫陸。兜楼婆畢力迦。沈水膠香。又飲瞻蔔。諸華香油。満千二百歳已。香油塗身。於日月浄明徳仏前。以天宝衣。而自纏身已。潅諸香油。以神通力願。而自燃身。光明ェ照。八十億恒河沙世界。

 即ち諸の香・栴檀・薫陸・兜楼婆・畢力迦・沈水・膠香を服し、又瞻蔔・諸の華香油を飲むこと千二百歳を満じ已って、香油を身に塗り、日月浄明徳仏の前に於て、天の宝衣を以て自ら身に纏い已って、諸の香油を潅ぎ、神通力の願を以て自ら身を燃して、光明遍く八十億恒河沙の世界を照す。

 

     (称歎)

其中諸仏。同時讃言。善哉善哉。善男子。是真精進。是名真法。供養如来。若以華香。瓔珞。焼香。抹香。塗香。天諸ヲ蓋。及海此岸。栴檀之香。如是等。種種諸物供養。所不能及。仮使国城妻子布施。亦所不及。善男子。是名第一之施。於諸施中。最尊最上。以法供養。諸如来故。作是語已。而各黙然。其身火燃。千二百歳。過是已後。其身乃尽。

 其の中の諸仏、同時に讃めて言わく、善哉善哉、善男子、是れ真の精進なり、是れを真の法をもって如来を供養すと名く。若し華・香・瓔珞・焼香・抹香・塗香・天・・幡蓋及び海此岸の栴檀の香、是の如き等の種々の諸物を以て供養すとも、及ぶこと能わざる所なり。仮使国城・妻子をもって布施すとも、亦及ばざる所なり。善男子、是れを第一の施と名く。諸の施の中に於て最尊最上なり、法を以て諸の如来を供養するが故にと。
 是の語を作し已って各黙然したもう。其の身の火燃ゆること千二百歳、是れを過ぎて已後其の身乃ち尽きぬ。

 

  未来

一切衆生。憙見菩薩。作如是法供養已。

 一切衆生憙見菩薩是の如き法の供養を作し已って、

 

   ×生王家 (王家に生ず)

命終之後。復生日月浄明徳仏国中。於浄徳王家。結跏趺坐。忽然化生。

 命終の後に復日月浄明徳仏の国の中に生じて、浄徳王の家に於て結跏趺坐して忽然に化生し、

 

   ×自説本事 (自ら本事を説く)

即為其父。而説偈言

 大王今当知 我経行彼処 即時得一切 現諸身三昧
 勤行大精進 捨所愛之身

説是偈已。而白父言。日月浄明徳仏。今故現在。我先供養仏已。得解一切衆生。
語言陀羅尼。復聞是法華経。八百千万億那由他。甄迦羅。頻婆羅。阿ン婆等偈。
大王。我今当還。供養此仏。

 即ち其の父の為に而も偈を説いて言さく、

  大王今当に知るべし 我彼の処に経行して
  即時に一切 現諸身三昧を得
  大精進を勤行して 所愛の身を捨てにき

 是の偈を説き已って父に白して言さく、
 日月浄明徳仏今故お現に在す。我先に仏を供養し已って解一切衆生語言陀羅尼を得、復是の法華経の八百千万億那由他・甄迦羅・頻婆羅・阿・婆等の偈を聞けり。大王、我今当に還って此の仏を供養すべしと。

 

    ×往到仏所 (仏所に往到す)

白已。即坐七宝之臺。上昇虚空。高七多羅樹。往到仏所。頭面礼足。合十指爪。以偈讃仏

 容顔甚奇妙 光明照十方 我適曾供養 今復還親近

爾時一切衆生。憙見菩薩。説是偈已。而白仏言。世尊。世尊猶故在世。

 白し已って即ち七宝の臺に坐し、虚空に上昇ること高さ七多羅樹にして、仏所に往到し頭面に足を礼し、十の指爪を合せて、偈を以て仏を讃めたてまつる。

  容顔甚だ奇妙にして 光明十方を照したもう
  我適曾供養し 今復還って親近したてまつる

 爾の時に一切衆生憙見菩薩是の偈を説き已って、仏に白して言さく、
 世尊、世尊猶故世に在す。

 

    ×如来付嘱 (如来の付嘱)

爾時日月浄明徳仏。告一切衆生。喜見菩薩。善男子。我涅槃時到。滅尽時至。汝可安施牀座。我於今夜。当般涅槃。又勅一切衆生。憙見菩薩。善男子。我以仏法。嘱累於汝。及諸菩薩大弟子。並阿耨多羅三藐三菩提法。亦以三千大千。七宝世界。諸宝樹宝臺。及給侍諸天。悉付於汝。我滅度後。所有舎利。亦付嘱汝。当令流布。広設供養。応起若干千塔。如是日月浄明徳仏。勅一切衆生。憙見菩薩已。於夜後分。入於涅槃。

 爾の時に日月浄明徳仏、一切衆生憙見菩薩に告げたまわく、
 善男子、我涅槃の時到り滅尽の時至りぬ。汝牀座を安施すべし、我今夜に於て当に般涅槃すべし。
 又一切衆生憙見菩薩に勅したまわく、
 善男子、我仏法を以て汝に嘱累す。及び諸の菩薩大弟子竝に阿耨多羅三藐三菩提の法、亦三千大千の七宝の世界・諸の宝樹・宝臺、及び給侍の諸天を以て悉く汝に付す。我が滅度の後、所有の舎利亦汝に付嘱す。当に流布せしめ広く供養を設くべし、若干千の塔を起つべし。
 是の如く日月浄明徳仏、一切衆生憙見菩薩に勅し已って、夜の後分に於て涅槃に入りたまいぬ。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

    ×奉命任持 (命を奉じて任持す)

爾時一切衆生。憙見菩薩。見仏滅度。悲感懊悩。恋慕於仏。

 爾の時に一切衆生憙見菩薩、仏の滅度を見て、悲感懊悩して仏を恋慕したてまつり、

 

     (起塔)

即以海此岸。栴檀為。供養仏身。而以焼之。火滅已後。収取舎利。作八万四千宝瓶。以起八万四千塔。高三世界。表刹荘厳。垂諸幡蓋。懸衆宝鈴。

 即ち海此岸の栴檀を以て・と為して、仏身を供養して以て之を焼きたてまつる。火滅えて已後舎利を収取し、八万四千の宝瓶を作って、以て八万四千の塔を起ること三世界より高く、表刹荘厳して、諸の幡蓋を垂れ衆の宝鈴を懸けたり。

 

     (焼臂)

爾時一切衆生。憙見菩薩。復自念言。我雖作是供養。心猶未足。我今当更。供養舎利。便語諸菩薩大弟子。及天龍夜叉等。一切大衆。汝等当一心念。我今供養。日月浄明徳仏舎利。作是後已。即於八万四千塔前。燃百福荘厳臂。七万二千歳。而以供養。無数求声聞衆。無量阿僧祇人。発阿耨多羅三藐三菩提心。皆使得住。現一切色身三昧。

 爾の時に一切衆生憙見菩薩、復自ら念言すらく、我是の供養を作すと雖も心猶お未だ足らず、我今当に更舎利を供養すべし。
 便ち諸の菩薩大弟子及び天・龍・夜叉等の一切の大衆に語らく、
 汝等当に一心に念ずべし、我今日月浄明徳仏の舎利を供養せん。
 是の語を作し已って、即ち八万四千の塔の前に於て、百福荘厳の臂を燃すこと七万二千歳にして以て供養す。無数の声聞を求むる衆・無量阿僧祇の人をして、阿耨多羅三藐三菩提の心を発さしめ、皆現一切色身三昧に住することを得せしむ。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

     (現報)

爾時諸菩薩。天人阿修羅等。見其無臂。憂悩悲哀。而作是言。此一切衆生。憙見菩薩。是我等師。教化我者。而今焼臂。身不具足。
于時一切衆生。憙見菩薩。於大衆中。立此誓言。我捨両臂。必当得仏。金色之身。若実不虚。令我両臂。還復如故。作是誓已。自然還復。由斯菩薩。福徳智慧。淳厚所致。当爾之時。三千大千世界。六種震動。天雨宝華。一切天人。得未曾有。

 爾の時に諸の菩薩・天・人・阿修羅等、其の臂なきを見て憂悩悲哀して、是の言を作さく、
 此の一切衆生憙見菩薩は是れ我等が師、我を教化したもう者なり。而るに今臂を焼いて身具足したまわず。
 時に一切衆生憙見菩薩、大衆の中に於て此誓言を立つ、
 我両つの臂を捨てて必ず当に仏の金色の身を得べし。若し実にして虚しからずんば、我が両つの臂をして還復すること故の如くならしめん。
 是の誓を作し已って自然に還復しぬ。斯の菩薩の福徳・智慧の淳厚なるに由って致す所なり。爾の時に当って三千大千世界六種に震動し、天より宝華を雨らして、一切天人未曾有なることを得。

 

 △結会

仏告。宿王華菩薩。於汝意云何。一切衆生。憙見菩薩。豈異人乎。今薬王菩薩是也。其所捨身布施。如是無量。百千万億。那由他数。

 仏、宿王華菩薩に告げたまわく、
 汝が意に於て云何、一切衆生憙見菩薩豈に異人ならん乎、今の薬王菩薩是れ也。其の身を捨てて布施する所、是の如く無量百千万億那由他数なり。

 

 △厳修

宿王華。若有発心。欲得阿耨多羅三藐三菩提者。能燃手指。乃至足一指。供養仏塔。勝以国城妻子。及三千大千国土。山林河池。諸珍宝物。而供養者。

 宿王華、若し発心して阿耨多羅三藐三菩提を得んと欲することあらん者は、能く手の指・乃至足の一指を燃して仏塔に供養せよ。国城・妻子及び三千大千国土の山林・河池・諸の珍宝物を以て供養せん者に勝らん。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

◎歎経妙 (経妙を歎ず)

○歎能持者 (能持の者を歎ず)

若復有人。以七宝満。三千大千世界。供養於仏。及大菩薩。辟支仏。阿羅漢。是人所得功徳。不如受持。此法華経。乃至一四句偈。其福最多。

 若し復人あって、七宝を以て三千大千世界に満てて、仏及び大菩薩・辟支仏・阿羅漢に供養せん。是の人の所得の功徳も、此の法華経の乃至一四句偈を受持する、其の福の最も多きには如かじ。

阿羅漢(あらかん) サンスクリット arhan の音写。応供(おうぐ)と漢訳される。尊敬される人、供養するに値する聖者という意味。小乗仏教の修行者たる声聞(しょうもん)の最高位。

○歎所持法 (所持の法を歎ず)

 △歎法体 (法体を歎ず)

  ×第一喩

宿王華。譬如一切。川流江河。諸水之中。海為第一。此法華経。亦復如是。於諸如来。所説経中。最為深大。

 宿王華、譬えば一切の川流江河の諸水の中に、海為れ第一なるが如く、此の法華経も亦復是の如し。諸の如来の所説の経の中に於て最も為れ深大なり。

 

  ×第二喩

又如土山。黒山。小鉄圍山。大鉄圍山。及十宝山。衆山之中。須弥山為第一。此法華経。亦復如是。於諸経中。最為其上。

 又土山・黒山・小鉄圍山・大鉄圍山及び十宝山の衆山の中に、須弥山為れ第一なるが如く、此の法華経も亦復是の如し。諸経の中に於て最も為れ其の上なり。

 

  ×第三喩

又如衆星之中。月天子。最為第一。此法華経。亦復如是。於千万億種。諸経法中。最為照明。

 又衆星の中に月天子最も為れ第一なるが如く、此の法華経も亦復是の如し。千万億種の諸経法の中に於て最も為れ照明なり。

 

  ×第四喩

又如日天子。能除諸闇。此経亦復如是。能破一切。不善之闇。

 又日天子の能く諸の闇を除くが如く、此の経も亦復是の如し。能く一切不善の闇を破す。

 

  ×第五喩

又如諸小王中。転輪聖王。最為第一。此経亦復如是。於衆経中。最為其尊。

 又諸の小王の中に、転輪聖王最も為れ第一なるが如く、此の経も亦復是の如し。衆経の中に於て最も為れ其の尊なり。

 

  ×第六喩

又如帝釈。於三十三天中王。此経亦復如是。諸経中王。

 又帝釈の三十三天の中に於て王なるが如く、此の経も亦復是の如し。諸経の中の王なり。

 

  ×第七喩

又如大梵天王。一切衆生之父。此経亦復如是。一切賢聖。学無学。及発菩薩心者之父。

 又大梵天王の一切衆生の父なるが如く、此の経も亦復是の如し。一切の賢・聖・学・無学及び菩薩の心を発す者の父なり。

 

  ×第八喩

又如一切。凡夫人中。須陀縺B斯陀含。阿那含。阿羅漢。辟支仏為第一。此経亦復如是。一切如来所説。若菩薩所説。若声聞所説。諸経法中。最為第一。有能受持。是経典者。亦復如是。於一切衆生中。亦為第一。

 又一切の凡夫人の中に須陀・・斯陀含・阿那含・阿羅漢・辟支仏為れ第一なるが如く、此の経も亦復是の如し。一切の如来の所説、若しは菩薩の所説、若しは声聞の所説、諸の経法の中に最も為れ第一なり。能く是の経典を受持することあらん者も亦復是の如し。

須陀(しゅだおん)  サンスクリット srota-apanna の音写。声聞四果の第一。三界の見惑(思想的な迷い)を断じて得られる境地。

斯陀含(しだごん) サンスクリット sakrd-agamin の音写。声聞四果の第二。貪欲・瞋恚・愚痴の三毒(煩悩)が薄くなった境地。

阿那含(あなごん) サンスクリット anagamin の音写。声聞四果の第三。欲界の煩悩を断じ尽して再び欲界に生を受けない位。

阿羅漢(あらかん) サンスクリット arhan の音写。応供(おうぐ)と漢訳される。尊敬される人、供養するに値する聖者という意味。小乗仏教の修行者たる声聞(しょうもん)の最高位。

  ×第九喩

一切声聞。辟支仏中。菩薩為第一。此経亦復如是。於一切諸経法中。最為第一。

 一切衆生の中に於て亦為れ第一なり。一切の声聞・辟支仏の中に菩薩為れ第一なり、此の経も亦復是の如し。一切の諸の経法の中に於て最も為れ第一なり。

 

  ×第十喩

如仏為諸法王。此経亦復如是。諸経中王。

 仏は為れ諸法の王なるが如く、此の経も亦復是の如し。諸経の中の王なり。

 

 △法用を歎ず

  ×抜苦用

宿王華。此経能救。一切衆生者。

 宿王華、此の経は能く一切衆生を救いたもう者なり。

 

  ×与楽用

此経能令。一切衆生。離諸苦悩。此経能大饒益。一切衆生。充満其願。如清涼池。能満一切。諸渇乏者。如寒者得火。如裸者得衣。如商人得主。如子得母。如渡得船。如病得医。如暗得燈。如貧得宝。如民得王。如賈客得海。如炬除暗。此法華経。亦復如是。

 此の経は能く一切衆生をして諸の苦悩を離れしめたもう。此の経は能く大に一切衆生を饒益して、其の願を充満せしめたもう。清涼の池の能く一切の諸の渇乏の者に満つるが如く、寒き者の火を得たるが如く、裸なる者の衣を得たるが如く、商人の主を得たるが如く、子の母を得たるが如く、渡りに船を得たるが如く、病に医を得たるが如く、暗に燈を得たるが如く、貧しきに宝を得たるが如く、民の王を得たるが如く、賈客の海を得たるが如く、炬の暗を除くが如く、此の法華経も亦復是の如し。

 

  ×結 ※底本本文になし(推定)

能令衆生。離一切苦。一切病痛。能解一切。生死之縛。

 能く衆生をして一切の苦・一切の病痛を離れ、能く一切の生死の縛を解かしめたもう。

 

○明持経福深 (持経の福を明す)

 △全分持経福 (全分持経の福)

若人得聞。此法華経。若自書。若教人書。所得功徳。以仏智慧。籌量多少。不得其辺。若書是経巻。華香瓔珞。焼香抹香塗香。幡蓋衣服。種種之燈。蘇燈油燈。諸香油燈。瞻蔔油燈。須曼那油燈。波羅羅油燈。婆利師迦油燈。那婆摩利油燈。供養。所得功徳。亦復無量。

 若し人此の法華経を聞くことを得て、若しは自らも書き若しは人をしても書かしめん。所得の功徳、仏の智慧を以て多少を籌量すとも其の辺を得じ。若し是の経巻を書いて華・香・瓔珞・焼香・抹香・塗香・幡蓋・衣服・種々の燈・蘇燈・油燈・諸の香油燈・瞻蔔油燈・須曼那油燈・波羅羅油燈・婆利師迦油燈・那婆摩利油燈をもって供養せん。所得の功徳亦復無量ならん。

 

 △別持此一品福 (別持一品の福)

  ×格量

宿王華。若有人。聞是薬王菩薩本事品者。亦得無量無辺功徳。若有女人。聞是薬王菩薩本事品。能受持者。尽是女身。後不復受。若如来滅後。後五百歳中。若有女人。聞是経典。如説修行。於此命終。即往安楽世界。阿弥陀仏。大菩薩衆。圍繞住処。生蓮華中。宝座之上。不復貪欲所悩。亦復不為瞋恚。愚痴所悩。亦復不為。慢嫉妬。諸垢所悩。得菩薩神通。無生法忍。得是忍已。眼根清浄。以是清浄眼根。見七百万二千億。那由他。恒河沙等。諸仏如来。是時諸仏。遥共讃言。善哉善哉。善男子。汝能於釈迦牟尼仏法中。受持読誦。是経思惟。為他人説。所得福徳。無量無辺。火不能焼。水不能漂。汝之功徳。千仏共説。不能令尽。汝今已能。破諸魔賊。壊生死軍。諸余怨敵。皆悉摧滅。善男子。百千諸仏。以神通力。共守護汝。於一切世間。天人之中。無如汝者。唯除如来。其諸声聞。辟支仏。乃至菩薩。智慧禅定。無有汝等者。宿王華。此菩薩。成就如是功徳。智慧之力。若有人。聞是薬王菩薩本事品。能随喜讃善者。是人現世口中。常出青蓮華香。身毛孔中。常出午頭栴檀之香。所得功徳。如上所説。

 宿王華、若し人あって是の薬王菩薩本事品を聞かん者は、亦無量無辺の功徳を得ん。若し女人にあって、是の薬王菩薩本事品を聞いて能く受持せん者は、是の女身を尽くして後に復受けじ。若し如来の滅後後の五百歳の中に、若し女人あって是の経典を聞いて説の如く修行せば、此に於て命終して、即ち安楽世界の阿弥陀仏の大菩薩衆の圍繞せる住処に往いて、蓮華の中の宝座の上に生ぜん。復貪欲に悩されじ。亦復瞋恚・愚痴に悩されじ。亦復・慢・嫉妬・諸垢に悩されじ。菩薩の神通・無生法忍を得ん。是の忍を得已って眼根清浄ならん。是の清浄の眼根を以て、七百万二千億那由他恒河沙等の諸仏如来を見たてまつらん。是の時に諸仏、遥かに共に讃めて言わく、
 善哉善哉、善男子、汝能く釈迦牟尼仏の法の中に於て、是の経を受持し読誦し思惟し、他人の為に説けり。所得の福徳無量無辺なり。火も焼くこと能わず、水も漂わすこと能わじ。汝の功徳は、千仏共に説きたもうとも、尽くさしむること能わじ。汝今已に能く諸の魔賊を破し生死の軍を壊し、諸余の怨敵皆悉く摧滅せり。善男子、百千の諸仏神通力を以て共に汝を守護したもう。一切の世間の天・人の中に於て汝に如く者なし。唯如来を除いて其の諸の声聞・辟支仏・乃至菩薩の智慧・禅定も、汝と等しき者あることなけん。
 宿王華、此の菩薩は是の如き功徳・智慧の力を成就せり。若し人あって是の薬王菩薩本事品を聞いて、能く随喜して善しと讃ぜば、是の人現世に口の中より常に青蓮華の香を出し、身の毛孔の中より常に午頭栴檀の香を出さん。所得の功徳上に説く所の如し。

 

  ×嘱累 ※底本表には付嘱とあった

是故宿王華。以此薬王菩薩本事品。嘱累於汝。我滅度後。後五百歳中。広宣流布。於閻浮提。無令断絶。悪魔魔民。諸天龍夜叉。鳩槃荼等。得其便也。宿王華。汝当以神通之力。守護是経。所以者何。此経則為。閻浮提人。病之良薬。若人有病。得聞是経。病即消滅。不老不死。宿王華。汝若見有。受持是経者。応以青蓮華。盛満抹香。供散其上。散已作是念言。此人不久。必当取草。坐於道場。破諸魔軍。当吹法螺。撃大法鼓。度脱一切衆。生老病死海。是故求仏道者。見有受持。是経典人。応当如是。生恭敬心。

 是の故に宿王華、此の薬王菩薩本事品を以て汝に嘱累す。我が滅度の後後の五百歳の中、閻浮提に広宣流布して、断絶して悪魔・魔民・諸天・龍・夜叉・鳩槃荼等に其の便を得せしむることなかれ。宿王華、汝当に神通の力を以て是の経を守護すべし。所以は何ん、此の経は則ち為れ閻浮提の人の病の良薬なり。若し人病あらんに是の経を聞くことを得ば、病即ち消滅して不老不死ならん。宿王華、汝若し是の経を受持することあらん者を見ては、青蓮華を以て抹香を盛り満てて、其の上に供散すべし。散じ已って是の念言を作すべし、
 此の人久しからずして、必ず当に草を取って道場に坐して諸の魔軍を破すべし。当に法の螺を吹き大法の鼓を撃って一切衆生の老・病・死の海を度脱すべし。
 是の故に仏道を求めん者、是の経典を受持することあらん人を見ては、応当に是の如く恭敬の心を生ずべし。

 

 △得利益 (利益を得)

説是薬王菩薩本事品時。八万四千菩薩。得解一切衆生。語言陀羅尼。

 是の薬王菩薩本事品を説きたもう時、八万四千の菩薩、解一切衆生語言陀羅尼を得たり。

 

 △多宝嘉称 (多宝嘉称す)

多宝如来。於宝塔中。讃宿王華菩薩言。善哉善哉。宿王華。汝成就不可思議功徳。乃能問釈迦牟尼仏。如此之事。利益無量。一切衆生

 多宝如来宝塔の中に於て宿王華菩薩を讃めて言わく、善哉善哉、宿王華、汝不可思議の功徳を成就して、乃ち能く釈迦牟尼仏に此の如きの事を問いたてまつりて、無量の一切衆生を利益す。



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