妙法蓮華経薬草喩品第五


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科段

譬説周述成段

長行

述成略説

述成法説

述成開譬

◎有差別の六譬
◎無差別の三譬

述成合譬

◎有差別の譬に合す
◎無差別の譬に合す

復宗称述

偈頌

法説を頌す

開譬を頌す

◎差別の譬
◎無差別の譬

合譬を頌す

◎差別に合す
◎無差別に合す

 

妙法蓮華経薬草喩品第五

長行

□第二譬説周・第三如来述成段

述成略説

爾時世尊。告摩訶迦葉。及諸大弟子。善哉善哉迦葉。善説如来。真実功徳。誠如所言。如来復有。無量無辺。阿僧祇功徳。汝等若於無量億劫。説不能尽。

 爾の時に世尊、摩訶迦葉及び諸の大弟子に告げたまわく、
 善哉善哉、迦葉、善く如来の真実の功徳を説く、誠に所言の如し。如来復無量無辺阿僧祇の功徳あり。汝等若し無量億劫に於て説くとも尽くすこと能わじ。

 

述成法説

迦葉当知。如来是諸法之王。若有所説。皆不虚也。於一切法。以智方便。而演説之。其所説法。皆悉到於。一切智地。如来観知。一切諸法。之所帰趣。亦知一切衆生。深心所行。通達無碍。又於諸法。究尽明了。示諸衆生。一切智慧。

 迦葉当に知るべし、如来は是れ諸法の王なり。若し所説あるは皆虚しからず。一切の法に於て、智の方便を以て之を演説す。其の所説の法は、皆悉く一切智地に到らしむ。如来は一切諸法の帰趣する所を観知し、亦一切衆生の深心の所行を知って、通達無碍なり。又諸法に於て究尽明了にして、諸の衆生に一切の智慧を示す。

 

述成開譬


◎有差別譬 (有差別の六譬)
(1) 土地

迦葉。譬如三千大千世界。山川渓谷土地。

 迦葉、譬えば三千大千世界の山川・渓谷・土地に

 

(2) 卉木 (きもく)

所生卉木叢林。及諸薬草。種類若干。名色各異。

 生いたる所の卉木・叢林及び諸の薬草、種類若干にして名色各異り、

 

(3) 密雲

密雲弥布。ェ覆三千大千世界。

 密雲弥布して普く三千大千世界に覆い、

 

(4) 注雨

一時等ロ。

 一時に等しく・ぐ、

 

(5) 受潤

其沢普洽。卉木叢林。及諸薬草。小根小茎。小枝小葉。中根中茎。中枝中葉。大根大茎。大枝大葉。

 其の沢遍く卉木・叢林及び諸の薬草の小根・小茎・小枝・小葉・中根・中茎・中枝・中葉・大根・大茎・大枝・大葉に洽う。

 

(6) 増長

諸樹大小。随上中下。各有所受。一雲所雨。称其種性。而得生長。華果敷実。

 諸樹の大小、上中下に随って各受くる所あり。一雲の雨らす所、其の種性に称うて生長することを得て、華果敷け実なる。

 


◎無差別譬 (無差別の三譬)

(1) 一地所生

雖一地所生。

 一地の所生

 

(2) 一雨所潤

一雨所潤。

 一雨の所潤なりと雖も、

※ 雖もは(1)にある

(3) 三草二木

而諸草木。各有差別。

 而も諸の草木各差別あるが如し。

 

述成合譬


◎合有差別譬 (有差別の譬に合す)

○合密雲

迦葉当知。如来亦復如是。出現於世。如大雲起。以大音声。普ェ世界。天人阿修羅。如彼大雲。ェ覆三千大千国土。

 迦葉当に知るべし、如来も亦復是の如し。世に出現すること大雲の起るが如く、大音声を以て普く世界の天・人・阿修羅に遍ぜること、彼の大雲の遍く三千大千国土に覆うが如し。

 

○合注雨

於大衆中。而唱是言。我是如来。応供。正ェ知。明行足。善逝。世間解。無上士。調御丈夫。天人師。仏。世尊。未度者令度。未解者令解。未安者令安。未涅槃者令得涅槃。今世後世。如実知之。我是一切知者。一切見者。知道者。開道者。設道者。汝等天人。阿修羅衆。皆応到此。為聴法故。

  大衆の中に於て是の言を唱う、我は是れ如来・応供・正遍知・明行足・善逝・世間解・無上士・調御丈夫・天人師・仏・世尊なり。未だ度せざる者は度せしめ、未だ解せざる者は解せしめ、未だ安せざる者は安せしめ、未だ涅槃せざる者は涅槃を得せしむ。今世後世、実の如く之を知る。我は是れ一切知者・一切見者・知道者・開道者・設道者なり。汝等天・人・阿修羅衆、皆此に到るべし、法を聴かんが為の故に

 

○合土地

 爾時無数。千万億種衆生。来至仏所。而聴法。

 爾の時に無数千万億種の衆生、仏所に来至して法を聴く

 

○合卉木

如来于時。観是衆生。諸根利鈍。精進懈怠

 如来時に是の衆生の諸根の利・鈍・精進・懈怠を観じて、

 

○合受潤 (筆者の推定)

随其所堪。而為説法。種種無量。皆令歓喜。快得善利。

 其の堪うる所に随って、為に法を説くこと種々無量にして、皆歓喜し快く善利を得せしむ。

 

○合増長

是諸衆生。聞是法已。現世安穏。後善処生。以道受楽。亦得聞法。既聞法已。離諸障碍。於諸法中。任力所能。漸得入道。

 是の諸の衆生、是の法を聞き已って、現世安穏にして後に善処に生じ、道を以て楽を受け、亦法を聞くことを得。既に法を聞き已って諸の障碍を離れ、諸法の中に於て力の能うる所に任せて、漸く道に入ることを得。

 

○提譬帖合六意 (譬を提げて六意に帖合す)

彼如大雲。雨於一切。卉木叢林。及諸薬草。如其種性。具足蒙潤。各得生長。

 彼の大雲の一切の卉木・叢林及び諸の薬草に雨るに、其の種性の如く具足して潤を蒙り、各生長することを得るが如し。

 


◎合無差別譬 (無差別の譬に合す)

○合一時一雨

如来説法。一相一味。所謂解脱相。離相滅相。究竟至於。一切種智。

 如来の説法は一相一味なり。所謂解脱相・離相・滅相なり。究竟して一切種智に至る。

 

○合草木差別

其有衆生。聞如来法。若持読誦。如説修行。所得功徳。不自覚知。所以者何。唯有如来。知此衆生。種相体性。念何事。思何事。修何事。云何念。
云何思。云何修。以何法念。以何法思。以何法修。以何法。得何法。衆生住於。種種之地。唯有如来。如実見之。明了無碍。彼如卉木叢林。諸薬草等。而不自知。上中下性。如来知是。一相一味之法。所謂解脱相。離相滅相。究竟涅槃。常寂滅相。終帰於空。仏知是已。観衆生心欲。而将護之。是故不即為説。一切種智。

 其れ衆生あって如来の法を聞いて、若しは持ち読誦し説の如く修行するに、得る所の功徳自ら覚知せず。所以は何ん、唯如来のみあって、此の衆生の種・相・体・性、何の事を念じ、何の事を思し、何の事を修し、云何に念じ、云何に思し、云何に修し、何の法を以て念じ、何の法を以て思し、何の法を以て修し、何の法を以て何の法を得ということを知れり。衆生の種々の地に住せるを、唯如来のみあって実の如く之を見て明了無碍なり。彼の卉木・叢林諸の薬草等の、而も自ら上中下の性を知らざるが如し。如来は是れ一相一味の法なりと知れり。所謂解脱相・離相・滅相・究竟涅槃・常寂滅相にして終に空に帰す。仏是れを知り已れども、衆生の心欲を観じて之を将護す。是の故に即ち為に一切種智を説かず。

 

復宗称述

汝等迦葉。甚為希有。能知如来。随宜説法。能信能受。所以者何。諸仏世尊。随宜説法。難解難知。

 汝等迦葉、甚だ為れ希有なり。能く如来の随宜の説法を知って、能く信じ能く受く。所以は何ん、諸仏世尊の随宜の説法は、解り難く知り難ければなり。

 

偈頌

爾時世尊。欲重宣此義。而説偈言

 爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言わく、

 

頌法説 (法説を頌す)

 破有法王 出現世間 随衆生欲 種種説法
 如来尊重 智慧深遠 久黙斯要 不務速説
 有智若聞 則能信解 無智疑悔 則為永失
 是故迦葉 随力為説 以種種縁 令得正見

  有を破する法王 世間に出現して
  衆生の欲に随って 種々に法を説く
  如来は尊重にして 智慧深遠なり
  久しく斯の要を黙して 務いで速かに説かず
  智あるは若し聞いては 則ち能く信解し
  智なきは疑悔して 則ち永く失うべし
  是の故に迦葉 力に随って為に説いて
  種々の縁を以て 正見を得せしむ

頌開譬 (開譬を頌す)


◎差別譬 (差別の譬)

○密雲 

 迦葉当知 譬如大雲 起於世間 ェ覆一切
 慧雲含潤 電光晃曜 雷声遠震 令衆悦豫
 日光掩蔽 地上清涼 靉靆垂布 如可承攬

  迦葉当に知るべし 譬えば大雲の
  世間に起って 遍く一切を覆うに
  慧雲潤を含み 電光晃り曜き
  雷声遠く震いて 衆をして悦豫せしめ
  日光掩い蔽して 地の上清涼に
  靉靆垂布して 承攬すべきが如し

 

○注雨

 其雨普等 四方倶下 流ロ無量 率土充洽

  其の雨普等にして 四方倶に下り
  流・すること無量にして 率土充ち洽う

 

○土地

 山川険谷 幽邃所生 卉木薬草

  山川険谷 幽邃に生いたる所の
  卉木薬草 

 

○受潤 卉木?

 大小諸樹
 百穀苗稼 甘蔗葡萄 雨之所潤 無不豊足
 乾地普洽 薬木竝茂 其雲所出 一味之水
 草木叢林 随分受潤

  大小の諸樹
  百穀苗稼 甘蔗葡萄
  雨の潤す所 豊かに足らざること無く
  乾地普く洽い 薬木竝に茂り
  其の雲より出ずる所の 一味の水に
  草木叢林 分に随って潤を受く

 

○増長

 一切諸樹 上中下等
 称其大小 各得生長 根茎枝葉 華果光色
 一雨所及 皆得鮮沢

  一切の諸樹 上中下等しく
  其の大小に称うて 各生長することを得
  根茎枝葉 華果光色
  一雨の及ぼす所 皆鮮沢することを得

 

◎無差別譬 (無差別の譬)

 如其体相 性分大小
 所潤是一 而各滋茂

  其の体相 性の大小に分れたるが如く
  潤す所是れ一なれども 而も各滋茂るが如く

 

頌合譬 (合譬を頌す)


◎合差別 (差別に合す)

○合密雲

 仏亦如是 出現於世
 譬如大雲 普覆一切 既出于世 為諸衆生
 分別演説 諸法之実 大聖世尊 於諸天人
 一切衆中 而宣是言 我為如来 両足之尊
 出于世間 猶如大雲 充潤一切 枯槁衆生
 皆令離苦 得安穏楽 世間之楽 及涅槃楽
 諸天人衆 一心善聴 皆応到此 覲無上尊
 我為世尊 無能及者 安穏衆生 故現於世
 為大衆説 甘露浄法 其法一味 解脱涅槃
 以一妙音 演暢斯義 常為大乗 而作因縁

  仏も亦是の如し 世に出現すること
  譬えば大雲の 普く一切に覆うが如し
  既に世に出でぬれば 諸の衆生の為に
  諸法の実を 分別し演説す
  大聖世尊 諸の天人
  一切衆の中に於て 是の言を宣ぶ
  我は為れ如来 両足の尊なり
  世間に出ずること 猶お大雲の如し
  一切の 枯槁の衆生を充潤して
  皆苦を離れて 安穏の楽
  世間の楽 及び涅槃の楽を得せしむ
  諸の天人衆 一心に善く聴け
  皆此に到って 無上尊を覲るべし
  我は為れ世尊なり 能く及ぶ者なし
  衆生を安穏ならしめんが 故に世に現じて
  大衆の為に 甘露の浄法を説く
  其の法一味にして 解脱涅槃なり
  一の妙音を以て 斯の義を演暢す
  常に大乗の為に 而も因縁を作す

 

○合山川

 我観一切 普皆平等 無有彼此 愛憎之心
 我無貧著 亦無限碍 恒為一切 平等説法
 如為一人 衆多亦然 常演説法 曾無他事
 去来坐立 終不疲厭 充足世間 如雨普潤

  我一切を観ること 普く皆平等にして
  彼此 愛憎の心あることなし
  我貧著なく 亦限碍なし
  恒に一切の為に 平等に法を説く
  一人の為にするが如く 衆多も亦然なり
  常に法を演説して 曾て他事なし
  去来坐立 終に疲厭せず
  世間に充足すること 雨の普く潤すが如し

 

○合卉木

 貴賎上下 持戒毀戒 威儀具足 及不具足
 正見邪見 利根鈍根 等雨法雨 而無懈倦

  貴賎上下 持戒毀戒
  威儀具足せる 及び具足せざる
  正見邪見 利根鈍根に
  等しく法雨を雨らして 懈倦なし

 

○合受潤 三草二木

 一切衆生 聞我法者 随力所受 住於諸地

  一切衆生の 我が法を聞く者は
  力の受くる所に随って 諸の地に住す

 

△小草 人天

 或処人天 転輪聖王 釈梵諸王 是小薬草

  或は人天 転輪聖王
  釈梵諸王に処する 是れ小の薬草なり

 

△中草 二乗

 知無漏法 能得涅槃 起六神通 及得三明
 独処山林 常行禅定 得縁覚証 是中薬草

  無漏の法を知って 能く涅槃を得
  六神通を起し 及び三明を得
  独山林に処し 常に禅定を行じて
  縁覚の証を得る 是れ中の薬草なり

 

△上草 三蔵菩薩

 求世尊処 我当作仏 行精進定 是上薬草

  世尊の処を求めて 我当に作仏すべしと
  精進定を行ずる 是れ上の薬草なり

 

△小樹 通教菩薩

 又諸仏子 専心仏道 常行慈悲 自知作仏
 決定無疑 是名小樹

  又諸の仏子 心を仏道に専らにして
  常に慈悲を行じ 自ら作仏せんこと
  決定して疑なしと知る 是れを小樹と名く

 

△大樹 別教菩薩

 安住神通 転不退輪
 度無量億 百千衆生 如是菩薩 名為大樹

  神通に安住して 不退の輪を転じ
  無量億 百千の衆生を度する
  是の如き菩薩を 名けて大樹と為す

 

△結所潤能潤 (所潤能潤を結す)

 仏平等説 如一味雨 随衆生性 所受不同
 如彼草木 所稟各異 仏以此喩 方便開示
 種種言辞 演説一法 於仏智慧 如海一滴

  仏の平等の説は 一味の雨の如し
  衆生の性に随って 受くる所不同なること
  彼の草木の 稟くる所各異るが如し
  仏此の喩を以て 方便して開示し
  種々の言辞をもって 一法を演説すれども
  仏の智慧に於ては 海の一滴の如し

 

○合増長 三草二木

 我雨法雨 充満世間 一味之法 随力修行
 彼如叢林 薬草諸樹 随其大小 漸増茂好

  我法雨を雨らして 世間に充満す
  一味の法を 力に随って修行すること
  彼の叢林 薬草諸樹の
  其の大小に随って 漸く増茂して好きが如し

 

△人天増長

 諸仏之法 常以一味 令諸世間 普得具足
 漸次修行 皆得道果

  諸仏の法は 常に一味を以て
  諸の世間をして 普く具足することを得せしめたもう
  漸次に修行して 皆道果を得

 

△二乗増長

 声聞縁覚 処於山林
 住最後身 聞法得果 是名薬草 各得増長

  声聞縁覚の 山林に処し
  最後身に住して 法を聞いて果を得る
  是れを薬草の 各増長することを得と名く

 

△通教菩薩

 若諸菩薩 智慧堅固 了達三界 求最上乗
 是名小樹 而得増長

  若し諸の菩薩 智慧堅固にして
  三界を了達し 最上乗を求むる
  是れを小樹の 而も増長することを得と名く

 

△別教菩薩

 復有住禅 得神通力
 聞諸法空 心大歓喜 放無数光 度諸衆生
 是名大樹 而得増長

  復禅に住して 神通力を得
  諸法空を聞いて 心大に歓喜し
  無数の光を放って 諸の衆生を度することある
  是れを大樹の 而も増長することを得と名く

 


◎無差別に合す

 如是迦葉 仏所説法
 譬如大雲 以一味雨 潤於人華 各得成実
 迦葉当知 以諸因縁 種種譬喩 開示仏道
 是我方便 諸仏亦然 今為汝等 説最実事
 諸声聞衆 皆非滅度 汝等所行 是菩薩道
 漸漸修学 悉当成仏

  是の如く迦葉 仏の所説の法は
  譬えば大雲の 一味の雨を以て
  人華を潤して 各実成ることを得せしむるが如し
  迦葉当に知るべし 諸の因縁
  種々の譬喩を以て 仏道を開示す
  是れ我が方便なり 諸仏も亦然なり
  今汝等が為に 最実事を説く
  諸の声聞衆は 皆滅度せるに非ず
  汝等が所行は 是れ菩薩の道なり
  漸漸に修学して 悉く当に成仏すべし


 

 


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