法事や葬儀の時、施餓鬼法要の時、僧侶の唱えている音楽のようなもの。それが声明と気づいていたとしても、なんと唱えているか皆目見当がつかないのではないだろうか。日蓮宗の法要で使われる声明について簡要に説明する。
宗定声明七曲
(1)道場偈 (どうじょうげ)
我此道場如帝珠 十方三宝影現中
我身影現三宝前 頭面摂足帰命礼
出典 天台大師『法華三昧懺儀』
意味 諸仏を道場に勧請し、五体倒地・頂足して帰命を誓う。
(訳) 我が此の道場は帝珠の如し。
十方の三宝影現する中に、
我が身三宝の前に影現せん。
頭面を足(みあし)に摂(せっ)して帰命し礼(らい)せん。
※帝珠=美しく輝く珠玉で飾られている帝釈天の宮殿。
特徴 七字四句の伽陀
※伽陀 = 道場偈や奉送の様に偈文四句からなり、法要の重要な所(最初・中・最後)で唱える。唱え方は荘厳に唱える事。荘厳に唱える為に声を引く
(声を伸ばしぎみにゆっくり唱える)。
(2)三宝礼 (さんぼうらい)
一心敬礼十方一切常住仏
一心敬礼十方一切常住法
一心敬礼十方一切常住僧
出典 「法華懺法」総礼三宝
意味 仏法僧を三つの宝として心から敬う。
特徴 起居礼
(3)切散華 (きりさんげ)
欲説法華経 香華供養仏
大哉大悟大聖主 香華供養仏
願以此功徳 香華供養仏
出典
欲説法華経 『妙法蓮華経序品第一』
大哉大悟大聖主 『無量義経徳行品第一』
願以此功徳 『妙法蓮華経化城喩品第七』
意味 散華は仏を請じ供養する意味がある。
仏は華(蓮)を以って座となすから、散華して仏を勧請する。
綺麗な華を散して、此土に浄土を現して道場を清め諸仏を勧請する。
(4)咒讃 (しゅさん)
阿檀地 仏駄波羶禰 薩婆陀羅尼 阿婆多尼
出典 普賢菩薩勧発品第二十八 普賢咒(抜粋)
意味 咒を唱えて仏徳を讃嘆、諸善奉行を誓う。
特徴 讃には梵讃・漢讃・和讃があるが、日蓮宗では普賢咒を用い咒讃と称する梵讃を行う。
本讃は省略せず「阿婆多尼」まで読むが、長いのでいわゆる略讃を用いる。
後に必ずニョウ・ハチの器楽供養を行う。
(5)対揚 (たいよう)
南無久遠実成一乗教主釈迦尊
多宝分身 證誠講演
誠敬 (文面は適宜で法要趣旨を述べる)
坐宝蓮華 成等正覚 (追善法要の時)
増円妙道 位隣大覚 (先師法要の時)
天下法界 平等利益
所願成弁 上行菩薩
出典 なし (作偈されたもの)
意味 応対称揚、つまり対告衆(導師と大衆)が如来の徳を称揚するという意味。
特徴 胡跪
(6)三帰 (さんき)
一切恭敬
自帰依仏 当願衆生 体解大道 発無上意
自帰依法 当願衆生 深入経蔵 智恵如海
自帰依僧 当願衆生 統理大衆 一切無礙
出典 『華厳経浄行品』
意味 法要の終わりに臨み、三宝帰依の誠を表す。
(訳)自ら仏に帰依せば、当に願すべし衆生、大道を体解して、無上意を発せんと。
自ら法に帰依せば、当に願すべし衆生、深く経蔵に入って、知恵海の如くならんと。
自ら僧に帰依せば、当に願すべし衆生、大衆を統理して、一切無碍(むげ)ならんと。
特徴 リズミカルでテンポの良い声明、起居礼
(7)奉送 (ぶそう)
唯願諸聖衆 決定證知我
各到隨所安 後復垂哀赴
出典 大毘盧遮那成仏神変加持経(大日経) 第二十五
(大日経 法の巻 不思議法師の疏(礼誦儀記の記述))
意味 法要が終わり、来臨の三宝聖衆に各本土に還帰して戴く事を請う。
(訳)唯(ただ)願わくは諸(もろもろ)の諸衆、決定して我を證知(しょうち)したまえ。各(おのおの)到って所安に隨(したが)い、後に復(また)哀赴(あいふ)を垂れたまえ。
特徴 五字四句の伽陀
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