南インド仏教遺跡
(デカン高原横断)


はじめに

エローラ

アジャンタ

ナーガルジュナコンダ

アマラバティー

番外編


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エローラ(Ellora)


● エローラ(Ellora)への道中

 平成10年2月12日未明、シンガポール航空 SQ338 便でムンバイ(ボンベイ)の空港に降り立ち、早朝 6:10 ムンバイ(ボンベイ)発の特急列車 7617EXP でオーランガバードに向かう。アラビア海からデカン高原を横断してベンガル湾へ抜ける旅の始まりだ。

 インドの東岸であるベンガル湾に注ぐ、ゴーターヴァリー川やクリシュナー川などの大河の源流は広大なインド大陸を横切り、インド西部アラビア海のすぐ近くであることに気づく。東ガート山脈を除けば、デカン高原の屋根はアラビア海に近い西ガート山脈のようだ。



● 寒かった A/C (エアコン)車輛

 ムンバイからオーランガバードまでは7時間以上の長旅である。しかし、この道中は非常に寒かった。事前にインドの A/C 車は寒いと聞いていたのでランニングシャツ、半袖ポロシャツ、長袖のトレーナーと三枚着て乗り込んだ。しかし、それでも寒い。寒い上に、インド人は壁の扇風機にスイッチを入れている。・・・。

 トレーナーを着た上半身はともかく、夏物スラックスの太股が冷えて困った。手ぬぐいタオルをかけて、更にバッグを膝の上において防戦したがダメだった。私の胃腸はこの寒さにあえなくダウン。(^_^;

 何でも、インドの A/C 車輛の乗車券は現地ではとても高価なものだそうだ。よって、インド人はガンガンにエアコンが効かないと納得しないと・・・添乗員さんの弁。



● オーランガバード(Aurangabad)

 ムンバイ(ボンベイ)から、北東に向かい西ガート山脈の北部の峠を越えたところがオーランガバード(アウランガバード Aurangabad)です。列車だと7時間以上の長旅です。飛行機の便があれば飛行機が正解かも。古都で由緒正しき町のようですが、駅や町の規模も様相も少々田舎の雰囲気です。


● ダウラターバード(Daulatabad)

 オーランガバードの駅から、バスに乗って一路エローラへ向かう。今後、この旅行記での道中は全て舗装路であったことを付記しておく。悪路を覚悟していたが、助かった。

 エローラに向かう途中、ダウラターバードという砦跡を通過した。
 この砦は、平原に孤立した180mほどの岩山をそのまま砦にしたもので、遠くから見てもその凄さがわかる。なんと周囲は人工の絶壁である。この砦を攻めようにも、あの絶壁を見ると戦意を喪失するかもしれない。さすが、エローラやアジャンタの石窟寺院を残すだけの地方である。このような砦が必要なほど、この地域は交通や戦略上の要衝であり、ヒマラヤからインド最南端のコモリン岬まで支配したトゥグルク朝がデリーからここに遷都したこともある。ただし、デリーからの強制移住が長続きせず、その遷都は一時的だった。

 砦からかなりの距離の場所に城壁が築かれていて、往時の繁栄と力を感じることができる。エローラに行く道中、この城壁をくぐることとなる。今度、エローラに来ることがあれば是非立ち寄りたい砦跡だ。


● エローラ(Ellora)

 さて、オーランガバードから1時間ほどでエローラに到着する。エローラはアジャンタとともに世界文化遺産に登録されている石窟寺院群だ。エローラの詳細についてはガイドブックに詳細に書かれているのでそちらを参考にして頂きたい。ここでは、ガイドブックにない情報を書かせて頂きたく思う。

 実際に訪れてみると、石窟寺院の規模の大きさと精巧さには驚かずにはいられない。精巧さに関しては敦煌の莫高窟の比ではない。間口の広さ、天井の高さ、壁面の彫刻、柱の配置、仏像・・・それらは重機やCADのない時代に作られたのだ。設計者や職人の技術の高さと根気、膨大な資金、篤い信仰心、それらの全てが揃わないとこのような芸術は残せなかっただろう。

  残念なことには、エローラの石窟寺院の壁画はほとんどはげ落ちている。壁画は次のアジャンタで鑑賞するしかない。ただ、仏教寺院ばかりのアジャンタに対して、こちらはヒンズー教やジャイナ教の石窟群も観られ、そして露天掘りのカイラーサナータ寺院(第16窟)が観られる。

彫り残された柱も計算し尽くされた荘厳さがある

石窟寺院内部は昼間でも暗い 修行僧の小さな部屋?がたくさんある

広い部屋に椅子のような直方体

見にくいが外部にも彫刻が成されている 直線や直方体は精確に彫られている

首から下のみ明るいのは職員の照明のせい

芸の細かな柱の上部と天井の境目

足を組まずに腰掛けている仏像をよくみかけた

人と比べると大きさがわかると思う このように岩を彫ってできた石窟寺院跡である

計算し尽くされた外観 細やかで荘厳な彫刻
外部の細かい彫刻 光を取り込む窓と彫刻された天井

仏像の後ろにはストゥーパ

茶色がかった仏像に荘厳な部屋はとても印象的

左はストゥーパの壁面の彫り物 天井

辛うじて残っている天井画

やはり蓮台の上で結跏趺坐されている

往時はきれいな彩色がなされていたのだろう 顔料を分析して当時の色彩を復元したものを模造して欲しい

奥の仏像の左右にそれぞれ七体の仏像

窓の左にたたずむ仏像 何かほっとする光景

直線的な柱と回廊を彫るのも大変だっただろう

どうしてこんなにたくさん仏像を彫ったのだろう 石窟内の階段
壁に彫られた仏像 こちらは風化が進んでいる


 


  カイラーサナータ寺院(第16窟)はさすがに規模が大きく、ガイドブックの写真からはその大きさをはかることはできない。そうそう、カイラーサナータ寺院(第16窟)を岩山の上から見ることもできます。入場料を払う入口を入らず、山に向かって右側の坂を登って行くと全景を見下ろすことができる。数十メートルの絶壁で柵などないから、高所恐怖症の人には決してお勧めできない。

 

大きさにビックリする 小さく人が移っている
上を見上げる 右上の絶壁には後で登った 大きな造形の細かな彫刻
これらは全て岩を露天掘りして造られた いかにもヒンズーらしい神様
本当に不思議な力をもっていそうだった
周囲の至る所に彫刻 窓?より
さっきの絶壁の上より 柵のない崖の上である 少し恐い

全体像 正面

 さて、インドの仏教遺跡全般に言えることだ。日本語ガイドさんがいる旅行の場合でも、お釈迦様の伝記(釈迦伝)やお釈迦様の前世物語(本生譚 = ジャータカ)などの勉強をしているとエローラやアジャンタをはじめ、仏教遺跡を巡るときに面白いと思う。さもなくば壁画や彫刻を観ても感動は半減すると思う。せっかくインドに行くのであれば良い仏縁だと思って勉強されては如何だろうか。後生までも功徳があるかも。

 また、日本語ガイドが近くにいない場合、現地の職員に英語で質問することになる。困るのは日本語で慣れ親しんでいる仏教用語を英語でどういうのかということだ。この仏教用語はインドのサンスクリットではどういうのかを調べられると質問するのに便利である。現地の日本語ガイドに専門的な質問をするにも有効かも知れない。


 ★ 現地情報

16窟のみビデオカメラ持ち込み Ru 25
16窟入場料は Ru 0.50 だそうですが、金曜日は無料だそうだ。
アジャンタのような、露店の客引きなどはほとんどない。

★ 参考となる旅行ガイド

地球の歩き方 '98〜'99版 Bインド P478 - P481
ブルーガイド 海外版 28 インド P212 - P214

★ おことわり

携行したカメラは35mmフィルムの全自動の小型カメラであり、旅行同行者に迷惑をかけない程度の限られた時間と行動範囲で撮ったものである。写真の拙さは勘弁して頂きたい。