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敦 煌 2

● 白馬塔

 鳩摩羅什三蔵が敦煌に至ったとき、経典を担がせた白馬が死んでしまったそうで、その供養のために建てられた塔。数百キロ毎にしかない砂漠のオアシス。馬が倒れてしまっても不思議はない。
 ここに奉られている白馬は、私たちの日常読んでいる経典の梵本(漢訳前のサンスクリット原典)を運んだのかも知れない。そう思える人には参詣の価値がある。そうでない人には、ただの高さ12mの変哲もない塔である。

 さて、ここの土産店で欲しいものがあった。それはチベット仏教の経典印刷用の版木である。複数の店にわたって数点あり、大きなものは日本円で1万円とか言われた。おそらく、交渉で5000円以下になったろう。値段は訊いていないが、小さなものだと更に安くなったかも知れない。
 迷っていると、中国人のスルーガイド(中国国内をずっと付きそう日本語ガイド)に止めるようにほのめかされた。あとで、聞くと古く見せて巧妙に作られた偽物だということだ。ただ、ここ数十年の悲惨なチベットの歴史を考えると、チベットの仏教経典がちり紙の如く扱われたこともあり、版木が流出する可能性は十分考えられる。
 真偽はわからないが2000〜3000円だったらレプリカとして買っても良かったか・・・。レプリカを彫るだけでも大変な作業である。

白馬塔 土産物屋ではチベット仏教経典の版木が!?

● 敦煌博物館

 敦煌博物館というと期待してしまうが、大きな期待はしない方が良い。展示室は2階に大きな部屋が2部屋だけ。その割に販売店が二階、一階、外と3ヵ所もある。
 私としては、敦煌で発掘されたであろう『妙法蓮華経』の古写本を二つ観られたのは印象的だったが・・・。

博物館正面(内部は撮影禁止)

他の展示物には脈絡のない旧式ジェット戦闘機が展示

● 莫高窟

 今般の旅行のハイライトのひとつが言わずと知れた莫高窟である。

 駐車場からはかなり歩かされる、これは土産物屋を通させるためではなく、クルマの振動から文化財をまもるためのものらしい。

 いざ莫高窟に至ると「あれっ」と思ってしまう。崖の岩肌は人工的な壁に覆われ、各窟は古いアパートのドアの様な鍵付きのドアで閉じられている。大谷探検隊の撮影した写真ような、外から壁画や仏像を拝むようなことはできない。

 そして、実際に観ることのできる窟であるが、数は限られてしまう。一般の参観券で見学可能な27窟についても、全てを莫高窟の日本語ガイドに案内されるわけではない。実際、そんなに観ると時間的にも体力的にも大変ではあるが・・・。

 日本から遙々やってきた者には遺憾なことだが、混んでいる窟はパスして空いている窟のみを案内するということもあるらしい。ただ、○○仏教に関する窟が観たいと莫高窟のガイドさんにお願いすると非公開の窟でも観せてくれるようだ。

一番目の牌楼 莫高窟へ至る門 2番目の牌楼 いよいよ莫高窟が目前に

各部屋は不愛想な鍵付きドアで仕切られている

莫高窟に向かって右側にある窟群
駐車場から干上がった川の対岸に見える
往時は職人が住んだ場所と説明される

莫高窟の象徴 北大仏殿(96窟)
この中で声明法要をした
それにしても大香炉の向きは逆では?

 莫高窟は撮影禁止で荷物の持ち込みも禁止である。荷物を添乗員さんに預けて参詣に出かける。なお、レポートは法華仏教の立場でのものである。

・北大仏殿で法要

 今般、許可を得て北大仏殿(96窟)で法要をした。
 敦煌莫高窟の象徴。九層楼。高さ43m。私の声明の恩師である上田尚教師の甘く潤いのある声明の句頭が響いたときの感動は今も忘れられない。私も声明師として参加したが・・・このような場所で声明を唱えられたことは一生の思い出になるだろう。対揚の次第音(輪唱)で間違ったことは内緒である!?

 さて、私たちは日蓮宗であるから唱題というものがある。唱題のときに日本から持参した団扇太鼓を打ってもよいか莫高窟の日本語ガイドに聞いたら可とのことである。内心、風化した文化遺産の漆喰の壁でも落ちてこないか心配だった。また43mの高さから太鼓の振動で何か落ちてきたら怪我の心配もある。結果的には大丈夫だった。

 この、団扇太鼓は僧侶用で若干大きいもので堂々とした音がするはずである。ところが、ここ敦煌で事前に試し打ちすると軽く甲高い音になってしまった。どうやら、敦煌の乾燥しきった空気が太鼓の皮を異常に乾燥させているようだ。法要までに湿らせておいた。

 次第 (勧請、十方礼仏、対揚、自我偈、唱題、回向、奉送)

・第103窟

 一般には公開されていない窟である。
 この窟の左側の壁面には、日本語ガイドによると向かって右側に『妙法蓮華経化城喩品第七』をあらわした壁画、向かって左側に『妙法蓮華経方便品第二』の壁画があった。『化城喩品』に関しては「化城宝処喩」だろう。
 『方便品』についてはハッキリしなかった。塔があってその周りに人がいた。小善成仏のあたりの話か※1・・・。

※1 『妙法蓮華経方便品第二』より

  諸仏滅度し已って 舎利を供養する者
  万億種の塔を起てて 金銀及び頗黎
  〓〓と碼碯 ・瑰瑠璃珠とをもって
  清浄に広く厳飾し 諸の塔を荘校し
  或は石廟を起て 栴檀及び沈水
  木樒竝に余の材 甎瓦泥土等をもってするあり
  若しは曠野の中に於て 土を積んで仏廟を成し
  乃至童子の戲に 沙を聚めて仏塔と為る
  是の如き諸人等 皆已に仏道を成じき

・第246窟

 北魏の時代のもので、この窟は一般公開されている。「地球の歩き方 39 西安とシルクロード」にも解説されている。そこにはないが、正面の本尊は二仏並座であった。法華経の虚空会の説法をあらわす本尊ではないだろうか?。ただし、以前パキスタンにも二仏並座の仏像があったそうだが、釈迦仏、多宝如来ではないということを聴いたことがあるので何とも言えない。
 仏像は赤っぽい黄土色で、2体の仏像の間の上方には長方形の何も書いていないものがあったと思う。ここに「南無妙法蓮華経」と書くと、一塔両尊の日蓮宗や法華宗の本尊みたいになる。次に説明する第259窟よりも親しみがわいた。
 二仏の足はともに半跏思惟像で、向かって左側の仏は右足を垂らし、向かって右側の仏は左足を垂らしている。ようするにお互いの外側の足を垂らしている。

・第259窟

 この窟も一般公開されている。「地球の歩き方 39 西安とシルクロード」には法華経に基づく本尊と紹介されている。もちろん二仏(釈迦・多宝)並座で、エンジ色のような茶色の仏像だった。後代に稚拙な修理がなされていることを、仏像の目をみて感じた。
 ここも第246窟の如く、二仏の足はともに半跏思惟像である。

 他にも何窟か参拝したが、省略する。

● 鳴沙山


ラクダ上から鳴沙山を撮影

煙草を吸いながら歩いているおじさんは、
私の乗っているラクダを引いている。
このラクダ、帰りはリタイヤしてしまって、
私は馬車(駱駝車)で帰るはめに。

ラクダは立つときと座る時に大きく揺れる
それが嫌な人はこちらへ

月牙泉

月牙泉に至るまでのため池で日没
画面が傾いている?
ラクダに揺られて撮ったもので・・傾いてしまった。

月牙泉の近くの尾根まで登って
日没後なのにうすら明るい
細かい砂と急斜面ゆえに登るのは一苦労

 鳴沙山の観光は理屈抜きに楽しい。広大な砂の山は、日本人の砂漠のイメージそのまま。砂の山は時間によって驚くほど色と表情を変える。

 ここの観光の一般的なコースは、入口からラクダに乗って月牙泉まで往復(30元)することである。それだけでも十分満喫できるが、私は砂山を登ることにもチャレンジした。

 砂山登山にチャレンジしている人たちが多いが、傾斜は意外と急であり、細かい砂に足を取られて登るのは意外と大変。荒い息に細かい砂の微粒子も進入してくる。砂山に登るこつは、尾根など人がよく通って踏み固められた場所を登ることか・・・。

 もし、再訪の機会があれば、ラクダに乗って鳴沙山山頂を目指したいし、軽飛行機にも乗りたい(観光客も乗れるのかなぁ?)、また急勾配の砂山を滑り降りる場所があるが挑戦してみたい。午後から夜まで半日いても飽きそうにない。うちの子供(小学生)が来たら喜ぶだろうな?

● ホテル

 敦煌では敦煌太陽大酒店に泊まった。4つ星で、敦煌では最高のホテル・・・らしい。
 こんな田舎でも、シャンプー、歯ブラシ、スリッパなどは備品としてあり、着物を着た日本語スタッフのいる日本食レストランもある立派なホテルである。ところが、次のような不具合があった。

・一見して客室は立派で綺麗であるが、ドレッサーの中は小学生が刷毛で塗装したような荒さ

・2台のエレベーターのうち右側の一台が故障で使用できない

・朝食レストランのある2階から上行きのボタンを押してもエレベーターが通過してしまう(いつまでも乗れない)

・エレベータ内の「開」ボタンを押してもドアがしまってしまう

・指示通りダイヤルしても日本への電話がかからない

・西安への市外通話すらかからなかったのでインターネットに接続できなかった

別段どれも深刻な問題でなく不快でもはない。非日常を楽しませてもらった。

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